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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > お多福飴〈たふくあめ〉(佐用郡)

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更新日:2013年3月11日

お多福飴〈たふくあめ〉(佐用郡)

年末がくると、佐用郡では昔から十二月二十四日から二十八日まで、久崎〈くざき〉・上月〈こうづき〉・佐用〈さよう〉・平福〈ひらふく〉・大田井〈おおたい〉の順で歳〈とし〉の市〈いち〉が立つことになっています。市場へは前日から各地の商人が入り込んで泊〈とま〉り、町の軒先を借りて正月用品その他のものをならべ、「さあさあ、ミカン安い、さあイワシやすい、まけたまけた。」と口ぐちに呼んで客を引き、近在の村々から集った人びとで、町中は押すな押すなのおおにぎわいです。
それぞれの家庭では市戻〈いちもど〉りといって、五目飯〈ごもくめし〉などをつくり、買物をして帰える主人には、銚子〈ちょうし〉の一本もつけたりして待ちうけます。

ここに棟割〈むねわり〉長家に住むささやかな一家があり、さっき父親が市から戻ってきました。
子どもたちはみなそれぞれに、みやげをもろうてはしゃぎまわって喜び、一家の内は早くもお正月がきたような気分がただよっていました。
父親はまた空き腹に一杯やってよいきげんになり、
「きょうは、もっともっと珍らしいものを買うてきてやったぞ、これをみい。」
長さ二十センチほどの赤青で着色した飴〈あめ〉の棒〈ぼう〉を五、六本取り出し、
「これはお多福飴〈たふくあめ〉、またこっちは金時飴〈きんときあめ〉ちゅうもんじゃ。この棒をへし折ったら、折れた口のどこへでも、お多やんや金時が出てきよるんじゃ。」
と、へし折って見せると、なるほど、父親のいうようにお多福や金時が出るので、子どもたちは大よろこびで、ワッと歓声〈かんせい〉をあげました。

父親はまた子どもたちの喜ぶのが、むしょうに嬉しくてたまらず、一杯のんだほろ酔〈よ〉いにまかせて、飴の棒を両手に持って立ちあがり、
「ああら、飴の中からお多やんがとんで出る。」
と、うたいながら踊りだしたので母親が、
「あのお父〈とう〉いな、たった一本のお銚子〈ちょうし〉で酔〈よ〉うとってじゃがな、あほげなこというて騒〈さわ〉ぎよったらとなりの衆〈しゅう〉が笑うてじゃがな。」
「なあにかまうもんかいやい、なんちゅうても、こがいなおもしろいものあるこっちゃない。ああら、飴の中からお多やんがとんで出る、飴の中から・・・。」
なおも踊りまわるうちに何かにつまずいて倒れました。そのはずみに間仕切りの壁を押しはずし、壁といっしょにとなりの座敷へこけ込んでしまいました。
不意〈ふい〉のことに、となりの人たちもびっくりしてあきれかえっていると、壁の下から顔をのぞかせて、
「アッ、えらいすんまへん、こりゃまあ、壁の中からお多やんがとんで出るじゃわい。」

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