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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > 清水の地蔵〈じぞう〉さんの由来〈ゆらい〉(赤穂市大津)

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更新日:2012年12月24日

清水の地蔵〈じぞう〉さんの由来〈ゆらい〉(赤穂市大津)

大津の清水東にある地蔵さんは、昔から、首から上の病〈やまい〉はお願いすれば、なんでも治してくださるということです。これについて、次のような話が伝えられています。

何百年もまえのことです。
都で、火をつけては人を殺し、押し入っては財宝〈ざいほう〉を盗〈ぬす〉みとるという大悪人がおりました。さんざん悪事を働いたあげく、身辺があやぶくなってきたので、都を逃げて大津のあたりまで落ちてきました。都からは、役人が大ぜいの手下をつれて追いかけてきました。悪いことはできぬもので、大津の山を逃げまわっていた大悪人も、清水のあたりにかくれているところを役人の手下に見つけられ、とうとうつかまってしまいました。
縄〈なわ〉をかけて引き立てられてきた大悪人の顔をみて、役人はびっくりしました。悪事を働いて逃げまわっていたのは、役人の実〈じつ〉の弟であったのです。つかまえてみてはじめてこれがわかったのです。
いくら、大悪人と捕手〈とりて〉であっても、役目を離れたら肉身の間柄〈あいだがら〉です。縄をかけて、都へ引き立てて帰っても手柄にはなりますが、弟は、どうせ打首になるのに決っています。まして、都には、年老いた母が独〈ひと〉りで兄弟の帰りを待っています。何とか助ける方法はないかと、いろいろ考えてみましたが、弟の罪は重くどうにもなりません。思案〈しあん〉のあげく、兄は弟にむかって、
「おまえは、人を殺し、火をつけ、ものを盗むなどこの世で許せぬかずかずの悪事を働いた。都へ帰れば打首はまぬがれまい。都でさらし首になったら、おまえのことが母にも知れよう。そのときの母のなげきを思うと、おまえを都へ引き立てる気にならぬ。おまえがいまここで死んで、後の世の人のために尽〈つく〉すことを誓〈ちか〉うなら、ふびんながら兄の手でここで処刑〈しょけい〉しよう。そうすれば、都の大悪人がおまえであったことも分らずにすみ、母もなげかずに、いつまでもおまえの帰りを待たれることになろう。その方が、母の悲しみも軽くてすむだろう。よく考えてみるがよい。」
と申しました。しばらく考えておりました弟は、はらはらと涙をこぼしながら、
「わたしは、この世で悪事のかぎりを働きました。それにもかかわらず兄上の役目をはなれた、肉身のあたたかいとりあつかいに、いまはすっかり目がさめました。この場で、兄上の手にかかって処刑していただくのが本望〈ほんもう〉です。どうか、その首をここに埋めて、その上に地蔵さんを建ててください。善人によみがえったわたしの魂〈たましい〉がその地蔵さんにのりうつって、首から上の病は何によらず、かならず治るようにお守りしますことを誓います。」
と申しました。兄は、弟が善人にたちかえったことを喜んで、
「よくぞ善人にたちかえった。それでこそわしの弟だ。かならず地蔵さんを建てて、おまえの供養もともどもにしてやるから安心して成仏せい。」
といい、涙ながらに処刑して、その首をそこに埋めその上に地蔵さんを建ててやりました。
清水の地蔵さんが首から上の病によく効〈き〉くのは、こういういわれがあるからだそうです。

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