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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > 千種念仏〈ちくさねんぶつ〉と椿〈つばき〉の逆〈さか〉ぐい(千種町)

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更新日:2012年12月24日

千種念仏〈ちくさねんぶつ〉と椿〈つばき〉の逆〈さか〉ぐい(千種町)

むかし、むかし、教信上人〈きょうしんしょうにん〉さんというそれはどえらい偉い坊さんがおっちゃって、播州〈ばんしゅう〉から因幡〈いなば〉(鳥取方面)へ越す人の荷物を持って運んでやったり、困っとる人を助けたり、病気の人を慰めてやったり、それはそれは徳の高い坊さんがおっちゃったげな。
その教信上人さんもとうとう死んでしもちゃって、その遺体〈いたい〉をとりあいして葬〈とむら〉いをするほど、したわれておっちゃったげな。
千種では教信上人さんの徳をたたえ、念仏道場を建てて供養〈くよう〉しながら、徳をしとうておるんじゃそうな。
毎年三月に大法要〈だいほうよう〉をし、千種念仏〈ちくさねんぶつ〉いうて近郷近在〈きんごうきんざい〉から、おおぜい参ってきて、教信上人さんの徳をしのんで、それはそれは、どえらいにぎわいが一週間ほど続くんじゃ。

ところが、いつのころからか、毎年千種念仏にはきれいな若い女が、一人づつ行方不明になりだしたんじゃ。念仏寺の坊さんが魔よけの祈とうをしたげな。
また、それとは別に、毎年毎年、それはどえらいべっぴん(大へん美しい)の若い娘が、島谷いうどっと(大へん)奥の山から、念仏に参ってきよったんじゃげな。
ところが、念仏寺の坊さんが祈とうした年の念仏の中日に、そのべっぴんが奥西山の「いのき」いうぶげんしゃどん・・・・・・・(大金持)の家へばんげ(夕方)に寄ってきて、「腹が痛いので一晩とめてくだされ。」いうたげな。
「いのき」のばさん(おばあさん)は親切にとめてやることにしたげな。
娘のいうことにゃ、「私の寝ている部屋の戸は、ぜったいに開けんとってくだされ。」というたげな。
ふしんに思うた「いのき」のばさんは、娘の寝静まったころ、どうしても部屋の中が見とうて、そおっと戸を細うあけて部屋の中をのぞいたげな。
するとどうじゃろう。きれいなべっぴんが寝とるはずの八畳の奥の間には、部屋いっぱいになって大蛇〈だいじゃ〉がうずまいて寝ており、ばさんはびっくりして、その場に腰ぬかして、へたって(すわって)しもうたげな。
大蛇はその音に気づき、あわてて島谷へ逃げてしもうたげなが、ばさんは、びっくりしたんがもとでとうとう寝ついてしもうたげな。
念仏寺の坊さんはさっそく「いのき」へきて、椿〈つばき〉の杖〈つえ〉を逆〈さか〉さまに立て、病気の祈とうをしたげな。
ばさんはまもなくなおり、そして毎年参ってきよった島谷のべっぴんは、それ以後は参らんようになったげな。
一人づつ行方不明になりよった娘も、それからはさらわれんとすむようになったげな。
千種念仏は、また昔のようににぎやかになり、おおぜいの人が参ってくるようになったげな。
「いのき」家の庭先には、その時坊さんが立てた椿の逆杖がいきついて、大木になって今も繁っているんじゃとな。

(山田権四郎さんの話)

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