ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > 茶と栗〈くり〉・柿〈かき〉・麩〈ふ〉(相生市)
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更新日:2013年1月14日
むかしあるところに、茶と栗〈くり〉と麩〈ふ〉を売りにまわる男がありました。
ある時、一日中まわったけれど、ひとつも売れずに帰ってきました。
「お前、どがいいうてまわったんぞ。」(何といって売ったのか)
とある男が聞くと、
「なんにもいわずに、だまってまわった。」といいました。
「そりゃ売れんはずじゃ、持っている物を、大きな声でいわなあかん。」
と教えました。
「へえ、なるほど、持っとる物の名をいいながら歩いたら売れるんじゃな。」
二日目に、しょんぼり帰ってきて、
「きょうも売れなんだ。」といいました。
前に教えた男は、
「どがいないい方をしたんぞ。」
というと、男は
「持っとる物を一ぺんにいわなわかるまいと思うて、『チャックリカーキフッ。』『チャックリカーキフッ。』というてまわった。」
といいました。
「そがいないいよう(そんないい方)では、さっぱりわからん。売れんのはあたりまえじゃ。」
「そんなら、どんないいようがあるんじゃ。」
「そりゃ、茶は茶でべつべつ、栗〈くり〉は栗でべつべつ、麩〈ふ〉は麩でべつべつにいわなあかんのじゃ。」
「なるほど、べつべつにな。あしたからよう売れるぞ。」
と、男は勇んで帰っていきました。
あくる日、男は朝早くから大きな声で
「茶ァは、茶ァでべーつべつ
くーりは、くーりでべーつべつ
ふーは、ふーでべーつべつ。」
「茶ァは、茶ァでべーつべつ
くーりは、くーりでべーつべつ
ふーは、ふーでべーつべつ。」
と、いいながら町々をまわって行きました。
はて、こんないい方で売れたものか、売れなかったものか。
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