頭のいくつもある男(相生市)
昔、むかし、ある村で新年宴会〈えんかい〉が開かれていました。
酒もよくまわり、にぎやかなことになりました。
ある人が酒の酌〈しゃく〉をし、つい、お金持ちの旦那〈だんな〉さんの着物をよごしてしまいました。
おわびをすると「こんな着物はなんぼでもある、かまわないよ。」といいました。
同じ場でのんでいた一人の男は、なるほどあんなふうにいえばいいのだな、と思いました。
酌をしてさわいでいる時、つい一人の男の手が頭にあたりました。
「すまなんだ、かんにんしてくれ」といいました。
すると、あてられた男は、
「こんな頭なんぼでもある。気をつかってもらわなくてもよい。」といいました。