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更新日:2012年6月20日
上郡町梨ヶ原国道二号線にある美松食堂南上の山のことを「イットン山」ともいいます。
昔この山すそに、百万坊のお寺があって栄えていましたが、ある時の戦火に焼かれてしまって、あとかたもなくなってしまいました。村の人びとは、戦火で死んだ人びとや、仏像の霊をとむらわなければ罰があたるといい、毎年八月十四、十五日(お盆)の夕方、この山の頂上二か所でたいまつを燃やし、「イットン、イットン、イットントン、そこらにいる者、水持ってこい。」と、ふもとの家々に届く声で、何回も何回もさけぶのがならわしでした。
これはすべて子ども(十才から十五才まで)のする仕事で、たいまつも直径三十センチ、長さ二メートルを越す大きなもので、子どもたちは、「ヨイサ、ヨイサ。」と山頂までかつぎあげて、火をつけ声をからして叫びました。
二日間のこの行事が終わると区長さんが、「ご苦労、ご苦労。」と酒一合とすいか、お菓子をふるまうのが習慣でした。ところがある年のこと、「こんなあほうなこと、しんどいわい。」といってやめたことがありました。
その夜、村中の人たちがねしずまったころ、誰か知らぬが、どの家の雨戸も「ドン、ドン。」たたき髪ずれの音がしたというのです。あくる日の朝「わしも聞いた。」「いやー、わたしも。」と村中大さわぎとなりました。それ以来、毎年このたいまつをたき水をあげて、霊をなぐさめることが続いています。
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