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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > 雨乞〈あまご〉い(新宮町)

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更新日:2012年12月24日

雨乞〈あまご〉い(新宮町)

「大天道〈おおてんとう〉、大天道!雨を下され大天道!」
「ドンドコドン・ドンドコドン」
暑くるしい夏山〈なつやま〉の峯〈みね〉にこだまする声と音、遠望〈えんぼう〉(とおみ)するところ、旗〈はた〉、幟〈のぼり〉が風にはためき、若者たちが鉢巻〈はちまき〉に手甲〈てこう〉、脚絆〈きゃはん〉(手や足につける布)の勇ましい姿で山道を登っていきます。
「暑いのう!。」
「ああ、苦しい!」
大干〈だいかん〉ばつ(ひでり)で、数十日の間、一滴〈てき〉の雨も降っていません。稲田の土が割れ、葉は黒ずんで、よじれてしまいました。きょうも、かんかん照りに、溜息〈ためいき〉ばかり。
お百姓〈ひゃくしょう〉さんの気持は、あせりと悲嘆〈ひたん〉(かなしみなげく)のあげく、大声で祈るひびきにも力が続きません。
播磨〈はりま〉・新宮〈しんぐう〉の里〈さと〉に市野保〈いちのほ〉という昔からの村があります。
ある夜〈よ〉「お玉〈たま〉ばあさん」に神のお告〈つ〉げがありました。
「雨を呼べ!祇園〈ぎおん〉さんの頂〈いただ〉から!」
「雨を下され大天道!」
山の峯々にこだまして祈りが続きます。すると、どうしたことでしょう。今まで雲一つなかった夏空にひとかたまりの黒雲が湧〈わ〉いてきました。
「おおてんと、おーてんとおー」
声がひとしきりはずみます。と、西北の天空に墨〈すみ〉を流したような雲、雲、とみるまに一陣〈いちじん〉の風が、さっと吹きおろしました。祇園さんの、そそり立つ岩はだが、
「ごごうーっ」
と鳴〈な〉りました。竜〈りゅう〉の吐〈は〉く火が雷鳴〈らいめい〉(いなづま)ときらめき、雹〈ひょう〉まじりの大粒の雨が若者たちの背中〈せなか〉をたたきつけ、滝〈たき〉のように流れました。水魂〈みずたま〉は断崖〈だんがい〉(切り立ったがけ)を下り、はるか麓〈ふもと〉に巨大〈きょだい〉な皿のような池を掘〈ほ〉りました。
「祇園さんに雲がかかると、きまって雷〈かみなり〉と大雨がくる。」
「大木を切ってしもうたから、今は祇園さん(岩山の頂〈いただ〉に神をまつるほこら)にもうこない。」
など、新宮の村人は申します。しかし、皿池〈さらいけ〉の水は、稲田の真〈まん〉中に、こんこんと湧〈わ〉き出る清水となって、年中涸〈か〉れることがないのです。
「お玉の清水」と地元〈じもと〉では呼んで、酒つくりの水にも使われました。

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