はたらかん(佐用郡)
ある男が、どうにも貧乏〈びんぼう〉で困るので、祈祷師〈きとうし〉のところへいって、
「私はどがいにも芽が出んので弱るんぢゃが、何かたたっているんじゃあるまいか、いっぺん伺〈うかが〉うてみてつかあされ。」とたのみました。
そこで祈祷師はよしよしと承知〈しょうち〉して、床の間に祭ってあるお不動さんに向かって、しばらく祈っていましたが、やがてふり向いて、その男にいうことには、
「ウーム、お前さんは大へんなものにたたられているわい。」
「エッ、何がたたっているんじゃろ。」
「五百羅漢〈らかん〉じゃ。」
「ナニッ、五百羅漢がたたっとるんかいな。いかさま、これじゃ貧乏するはずじゃわい。何とかそのたたりをといてもらう方法はないじゃろうか。」
「そりゃ、方法はないでもないがなあ、もっとも五百の羅漢さんが、みんなたたっているというわけじゃないがな、たたっとるのはいちばん端の羅漢さんじゃな。」
「へえ、それはいったい何という羅漢さんじゃな。」
「それは、はたらかん(働かない)じゃ。」