ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > そばの花(菖蒲谷〈しょうぶだに〉)(揖西町)
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更新日:2013年2月18日
いつごろの話かわかりません。
龍野のお殿様が、ある日、家来をつれて、鷹狩〈たかが〉りをなされました。揖西町の新宮谷〈しんぐうだに〉から、井関谷〈いせきだに〉のあたりまで、だんだんと、山ふかく狩場をひろげていかれました。
この日は、えものも多かったのでしょう。お殿様は、たいへんなごきげんでした。お殿様は、おつかれになったのか、しばらく休まれました。そろそろ、お城へ帰ろうと腰をあげられたとき、山のむこうに、たくさんの蝶〈ちょう〉や蜂〈はち〉が舞〈ま〉っているのが目にとまりました。お殿様は、これはふしぎだ、こんな山中に、なぜだろう。と、お思いになりました。
そこで、お殿様は、興味〈きょうみ〉をおもちになり、蝶や蜂の舞っているところへ、どんどんおくふかくわけ入っていかれました。すると、高く熊笹〈くまざさ〉のはえしげっている間から、まっ白な、目もさめるような白い花畑が見えました。白い花畑は、よくみると、いちめんの「そば畑」でした。そして、いまがちょうど花ざかりなのです。そこを、蝶や蜂がまっているのでした。
お殿様は、しばらく、その美しさに見とれておいででした。そして、そば畑のむこうに目をうつされたお殿様は、二度びっくりなさいました。そこに、五、六軒のくさぶきの家がひっそりとたたずんでいたからです。
お殿様は、お供の人に、あれは、なんという村かとおききになりました。お供の人も、はじめて見る村だっので、答えることができませんでした。
いままで何百年もの間、だれにも気ずかれず、ひっそり暮していた菖蒲谷〈しょうぶだに〉の村が、はじめて、里の人に見つかったときのお話だそうです。
この人たちは、むかし、源氏に破れた平家の落人〈おちうど〉の子孫であるといわれています。
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