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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > 朱椀朱膳〈しゅわんしゅぜん〉(相生市)

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更新日:2012年12月24日

朱椀朱膳〈しゅわんしゅぜん〉(相生市)

むかし、やまがのことばのようわからん人が、京へのぼっていました。
すると、その人と同じように京へ上る人があったのでその人に、
「あんた、どこいきだす。」
とたずねると、
「へえ、わて(わたし)上洛〈じょうらく〉しよります。」
と答えました。
やまがの人は、ハハア、のぼることを上洛というんじゃな、と思ってさっそくそのことを帳面〈ちょうめん〉につけました。

やまがの人は、また旅を続けました。
こんどは、京からくだってくる旅人に会いました。
その旅人にたずねてみると、
「へえ、下洛〈げらく〉します。」
といいました。
やまがの人は、ハハア、くだることは下洛というんじゃな、と思ってそれを帳面につけました。

それからまた旅を続けていくと、ある町はずれに石屋があって、石塔〈せきとう〉をきっていました。
それを見てやまがの人が、石屋にたずねました。
「それ、なんだす。」
「へえ、これ和泉式部〈いずみしきぶ〉だす。」
やまがの人は、ハハア、石のことは和泉式部というんじゃなと思って、また帳面につけました。

それからまた歩いていると、さかな売りが大きな魚の頭を、桶〈おけ〉に入れてかついでいました。
やまがの人は、それをのぞきこんで、
「これなんだす。」と聞くと、
「へえ、これはボラだす。」
といったので、やまがの人は、頭のことをボラだと思って、それを帳面につけました。

それからまた旅をしていると、ある村で赤いお椀〈わん〉やお膳〈ぜん〉をつくっているところがありました。
「それなんちゅうもんだす。」
と聞くと、せっせとつくっている人は、
「これは、朱椀朱膳〈しゅわんしゅぜん〉というものです。」
と答えました。
ハハア、赤い物は朱椀朱膳というんじゃなと思って、帳面につけました。

またしばらく歩くと、巡礼〈じゅんれい〉が門口に立って、
「巡礼〈じゅんれい〉に御報謝〈ごほうしゃ〉ァ。」チリン・チリン
「巡礼に御報謝ァ。」チリン・チリンと鈴をふっています。
ハハン、物をくれという時には、巡礼に御報謝ァ。というんじゃなと思って帳面につけました。
やまがの人は、そんな旅をして家に帰りました。

ある日、子どもが柿の木から落ちました。
血がたくさんでてきました。
このままにしておくと死ぬかもしれんと思って、嫁さんに医者へ薬をもらいに行かせようとしました。
すぐに手紙を書こうとしましたが、どう書いてよいかわかりません。
おおそうじゃ、この前の旅の時の帳面に書いてあると思って、帳面を出してみると手紙がすぐに書けました。

「柿の木に上洛いたし候〈そうろう〉ところ、たちまち下洛いたし、和泉式部でボラ打って、朱椀朱膳流れ出で候、薬一服、巡礼に御報謝、チリン・チリン。」

と書いたそうです。

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