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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > お猿〈さる〉の恩がえし(相生市)

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更新日:2012年10月1日

お猿〈さる〉の恩がえし(相生市)

むかし、海べに近い山坂道を一人の旅の男が上っておりました。坂を七分目まで上ったとき、道ばたの笹原がざわめき、うめき声が聞こえ、何ものかが格〈かく〉とうしているもようです。急いで近づいてみると、一匹の猿〈さる〉が大きな蛸〈たこ〉にしめつけられ、顔をまっ赤にして、ふりほどこうともがいています。
蛸は八本の足でからだを巻き、首をしめています。猿はだんだん弱り、今にも息がたえそうです。

旅の男は急ぎ脇差〈わきざし〉(刀)を抜いて、蛸の足を一本一本切りはなしていきました。蛸は残った足で海の方へ逃げて行き、猿はやっとのことで助かりました。しばらくぐったりしておりましたが、やがて旅人に助けられたことがわかったらしく、ぴょこんと頭を下げ、うれしそうな顔をしました。

旅の男が歩きはじめると、猿は旅人の着物のすそを引き、しきりにかたわらの草むらを指さし、何かいいたげなようすです。そこには、大きな風呂敷〈ふろしき〉包みが置かれていました。
「ははぁ、お礼に受け取ってくれというのだな。」と思って、拾い上げると、猿は安心したように、また何度も頭を下げて山の中へかくれていきました。

坂の上まで上りつめると、もう日暮〈ひぐ〉れというのに、みもしらぬきれいな女の人が姿をあらわし、旅人に、にこにこ笑いかけ、こちらにこいと手まねきするのです。きょうはおかしなことばかりあるものだと思いながら、相手にならず、急ぎ足で坂を下り、やっと下までたどりつきました。
もう日はとっぷりと暮れておりました。宿の主人はまじまじと旅の男の顔をみながら、
「お客さん、坂の上で何か変ったものを見てなかったか。」
と尋ねます。
「ああ、きれいな女の人が、にこにこ笑いかけて、おいでおいでをした。」
「さあ、それですがな。あれは化け物じゃ。みんなあの女の相手になって、ひどい目に合わされるのじゃ。それにしても、今夜は何か変ったことがなけりゃええが、こわやこわや。」
と心配そうに大急ぎで雨戸を厳重〈げんじゅう〉にして、早じまいしてしまいました。旅の男も何か薄気味〈うすきみ〉悪くなり、猿にもらった風呂敷包みを庭にほり出したまま、夕食もそこそこに寝てしまいました。

夜がふけてきました。にわかに風がびゅうゆびゅうと吹き、雨がはげしく降ってきました。そのうち暴風雨の中で、気味悪い叫び声が聞こえ、ばたんばたんと雨戸をたたく音がします。何かがあばれているもようです。旅の男は、おそろしくて、ふとんを頭からかぶり、がたがたふるえていました。
やがて東の方が白みかけました。おそろしい風雨も、うそのようにやみました。朝日がのぼりました。
「やれやれ、助かった。」
旅人は、おそるおそる雨戸をあけてみて、あっと驚きました。そのあたり一面、なめくじが死んだりはい回っていました。きのう猿のくれた風呂敷包みからはい出したものでした。きのう山の上で見た女は実は大蛇で、旅の男をとって食おうとやってきたものが、なめくじに妨〈さまた〉げられてどうしても中に入れなかったのだということがわかりました。お猿が恩がえしをしてくれたのでした。

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