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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』西播編 > 帆坂池〈ほさかいけ〉の主〈ぬし〉(赤穂市大津)

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更新日:2013年2月4日

帆坂池〈ほさかいけ〉の主〈ぬし〉(赤穂市大津)

帆坂池〈ほさかいけ〉の主〈ぬし〉は、玄能〈げんのう〉であるといわれています。玄能というのは、石工が石を割るときに使う鉄の大槌〈つち〉のことです。

昔はこの池に、主としてうわばみ・・・・(大蛇)が住んでいました。池のまわりには、何百年もたったと思われる大きな杉の木がいちめんに茂っていて、昼でもうすぐらく、いかにもうわばみ・・・・が住んでいそうな池でした。
池のうわばみ・・・・は、一日に一度は息をするために、池の面に姿をあらわさねばなりません。姿を水の上に出しますと、まわりの杉の木の枝から露〈つゆ〉が落ちてきて、うわばみ・・・・の背中を打ちます。このことが毎日続きますので、うわばみ・・・・の背なかの皮がくさりはじめました。しかし、息をするためには、どうしても一度は水面に出なければなりません。浮かぶ場所をいろいろ変えてみましたが、池をおおうように杉が茂っていて、どこに浮んでも杉の露が落ちてきてうわばみ・・・・の背中を打ちます。傷は、だんだんひどくなってきました。これでは、背中がくさってしまうと心配になったうわばみ・・・・は、ある日、武士〈さむらい〉の姿に身を化〈ばか〉して、備前〈びぜん〉(岡山県)の湯〈ゆ〉の郷〈ごう〉の温泉〈おんせん〉へ湯治〈とうじ〉(温泉に入って病を治すこと)に出かけました。三月〈みつき〉ほどの湯治で、背中の傷がすっかりよくなりましたので、うわばみ・・・・は、武士の姿のままで赤穂に帰り、侍〈さむらい〉となって殿さまにつかえることにしました。
「あの池のまわりに杉の林があるかぎり、露が落ちて、背中をくさらせるにちがいない。なんとしても、一本も残さず杉の木を切ってしまわなければ安心して、この池に住むことができぬ。」と考えたのです。その年の夏は、雨が一滴も降らず、ひどいかんばつになりました。田の水はいうまでもなく、飲み水まで不自由になってきました。だれもが、雨を降らすよい考えはないかと思いなやんでいるとき、うわばみ・・・・の武士は殿さまに申し出ました。
「帆坂池〈ほさかいけ〉のまわりの杉の木を残らず切りたおしたら、きっと大雨が降ります。」
と、殿さまも、困っている時だったので、大そう喜んで、さっそく家来のものに池の杉を切りはらわせました。しかし、一滴の雨も降ってきませんでした。かえってかんばつがはげしくなってきました。
殿さまは、大そう腹を立てて、その武士を捕〈とら〉えるよう命じました。家来のものが、縄〈なわ〉をかけようとしますと、武士は本身をあらわし、大きなうわばみ・・・・の姿となって、城をぬけだし帆坂池に逃げこみました。家来のものどもは池まで追いかけてきましたが、どうすることもできません。とおりかかった石工がこれをみて、持っていた玄能〈げんのう〉を池の中に投げこみました。かんばつで水が少なくなっていたため、玄能はうまくうわばみ・・・・の頭にあたりました。うわばみ・・・・の頭から血がふきだし、血煙となって空高く舞い上り、まっ黒な雲のかたまりになり、その雲からはげしく雨が降ってきました。うわばみ・・・・は、その雨足を橋として、池を出て黒雲にのり、どこかへ行ってしまいました。

それから、この池の主は、玄能ということになりました。帆坂池の水がいつもうす茶色ににごっているのは、玄能の錆〈さび〉が少しずつとけてくるからだといわれています。

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