ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 幽霊〈ゆうれい〉の話(三木市志染町戸田)
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更新日:2012年11月19日
大正の初めごろ、志染〈しじみ〉町の戸田というところに住んでいた男が裏山を拓〈ひら〉いていました。ある夜その男がふと目をさましました。明かりを消したはずなのに、ぼんやりと明かりがさして大勢のざわざわする音が聞こえてきます。男は、そっと起きて明るい方へ近よってのぞきますと、長い縁側〈えんがわ〉に坊さんらしい人が、ズラッと座敷〈ざしき〉に向いて、てんでにわけのわからぬことをしゃべっているのでした。
黒い衣〈ころも〉を着ているもの、むらさきの衣や、いろいろの衣をつけた人たちの顔をじっと見つめていた男は、びっくりしました。それは死んだ先祖〈せんぞ〉たちの顔だったのです。両親の顔、祖父母の顔もはっきり見えました。男は、腰をぬかしてしまって、ただ手を合せて、念仏〈ねんぶつ〉をとなえるばかりです。そのうち東が白〈しら〉みかけるにつれて消えてしまいました。
男は次の夜が心配で、親類の人を呼んでいっしょに寝てもらいましたが、昨夜よりも数がふえ、声も一段と高まってます。次の夜も次の夜も続いて、みんなの顔も青白くなってしまいました。
あまり気味〈きみ〉が悪いので易者〈えきしゃ〉に占〈うらな〉ってもらいますと、
「おまえは近ごろ、山を拓いている。墓と知らずに掘りかえしたのだろう。」
と、いうのです。調べてみると、そのとおりでした。坊さんにおがんでもらったが、ききめがありません。とうとう本山のえらい坊さんを招〈まね〉いて読経〈どきょう〉してもらうと、不思議〈ふしぎ〉、不思議、亡霊〈ぼうれい〉の姿は一つ消え、また一つ消えて、しばらくの間に、すべて姿をかくしてしまいました。
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