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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 藤〈ふじ〉の井〈い〉(高砂市北浜町西浜)

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更新日:2013年2月11日

藤〈ふじ〉の井〈い〉(高砂市北浜町西浜)

むかし、西浜村の船乗りがある所に船を着け、やがて用を終〈お〉えて帰ろうとしていると、海辺〈うみべ〉に一人の貴人〈きじん〉が現われて、
「その船にわしを乗せてくれ。」
とおっしゃいましたので、
「これは帰り船でございますが、いったいあなた様はどちらへおいでになりたいのですか。」
と尋ねましたところ、
「どこでもよい。なんじの帰る所まで乗せて行ってもらえばよい。」
との返事でしたので、船にお乗せして西浜村に帰ってきました。

その夜は西浜村の北端を少し離れた小さな森のある所で一泊なさいましたが、翌日になって、
「わしはここに永住したいと思ったけれども、どうも地勢が永住の地に適していないようである。だから、他の土地をさがすためになんじと別れよう。この後、一夜のうちに千本の松がはえた所があれば、そこにわしが住んでいると思うがよい。別れにあたって、なんじがわしをここまで乗せてくれた労〈ろう〉に報〈むく〉いたいから、何なりと望みがあれば申してみよ。かなえてやろう。」
とおっしゃいましたので、
「あなた様のお名前をお聞かせください。」
と申しますと、
「わしは八幡大神〈はちまんだいじん〉である。」
とお名乗りになりました。
「それではひとつ望みをかなえてください。この村は昔から井戸水がみな塩気〈しおけ〉を含んでいて飲料〈いんりょう〉に適しません。村民一同はたいへん困っておりますので、どうか良い飲み水をおあたえください。」
「さようか。それではここに井戸を掘るがよい。」
その指図〈さしず〉にしたがって掘った井戸が藤〈ふじ〉の井〈い〉です。

その後まもなく、現在の姫路市白浜の松原八幡宮のある所に、一夜に千本の松がはえましたので、その土地を千本松原と名づけました。後にただ単に松原とだけ呼ぶようになり、その地に八幡宮を建てて、西浜村の藤の井の水をくんで供〈そな〉えることになりました。ずっと後になって、東山村の水を供えるようになったため、東山村の井戸も藤の井と名づけられたということです。

さて、この西浜村の藤の井は藤井坂を東へ下〈くだ〉った右手にあって、いつもきれいな水がこんこんと湧〈わ〉き出ており、どんなにひどい干〈かん〉ばつの時にも決してかれることがなく、今でも藤井の井戸と呼ばれて西浜の人びとの飲料水となっています。

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