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更新日:2013年3月11日
昔、仁徳〈にんとく〉天皇のころに、他田熊千〈おさだのくまち〉という人がありました。もと、播磨〈はりま〉の奥地に住んでいましたが、もっといいところはないかと印南郡の方へ出てきました。
このころの印南郡は、まだ、あまり、人が住んでいませんでした。山にはいっぱい木が茂り、平野にも雑草〈ざっそう〉や大小の木が生えて道などまともにありません。熊千は、もともと、お酒が好きでしたから、自分の馬に大きな瓶〈みか〉(かめ)をつけ、その中にお酒をいっぱい入れていました。ところが、今の神吉〈かんき〉あたりまできたとき、馬がつまづいて前膝〈まえひざ〉を折りました。そのひょうしに、背に積んだ瓶〈みか〉がガチャンと落ち、中のお酒が流れ出てしまいました。
熊千は、惜しさに、茫然〈ぼうぜん〉と立っていました。しかし、やがて、
「これは、ここへ住め、という神様のお告げかも知れない。」
と考えなおし、近くに家をつくって住みました。そして、この地を“瓶落〈みかおち〉の村”と呼びました。
熊千は、こののち、附近の地を開墾〈かいこん〉して裕福〈ゆうふく〉になりました。また、この瓶落村は、のち、「含芸村〈かむきむら〉」と呼ばれるようになりました。“かむき”というのは、古語でいう「醸酒〈かむき〉」のことですが、また、「神酒〈かんみき〉」のつまったものだ、ともいいます。
(『播磨国風土記』)
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