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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > あまんじゃこ(中町、加美町、八千代町)

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更新日:2012年12月17日

あまんじゃこ(中町、加美町、八千代町)

「天〈あま〉の邪鬼〈じゃく〉」というと、人のいったりしたりすることにわざと反対〈はんたい〉して、無理〈むり〉に片意地〈かたいじ〉をはるもの、つまりつむじまがりのことですが、播磨〈はりま〉の国〈くに〉にいた「あまんじゃこ」もやはりそのなかまのようで、ちょっぴりいたずらっぽくて、ものすごい力〈ちから〉もちで、とても体〈からだ〉の大きな男だったようです。

あまんじゃこは、あちこちの国をめぐり歩きましたが、のびのびと背〈せ〉のびをして歩ける土地はどこにもなく、いつも小さく小さくかがみこんで、はうようにして歩いていましたが、それでもどうかすると頭を、「ゴツン」と天〈てん〉にぶつけてしまい、いつも痛〈いた〉い思いをして、すっかり困っていました。
それが、たまたまこの地〈ち〉へとやってきましたところ、天がぐーんと上の方にあがっているので、やっと背のびをして歩くことができました。あまんじゃこは、大喜〈おおよろこ〉びで、
「ここは、高いなあ・・・。」といいました。それからこの土地を「多可〈たか〉」郡というようになりました。また、あまんじゃこは、あまりのうれしさに、ほうぼうを歩きまわりましたので、その踏〈ふ〉んだ足あとが、たくさんの沼〈ぬま〉になりました。

あまんじゃこは、すっかりこの土地が気にいったらしく、長い間住〈す〉むことにしました。そのあいだ、ずいぶんといろんないたずらをしました。
あるときは夜の明けぬうちに、多可郡の西の端〈はし〉の神崎〈かんざき〉郡との境〈さかい〉の笠形〈かさがた〉山の岩を砕〈くだ〉いて、その岩に縄〈なわ〉をしばりつけて村村を「ゴロ、ゴロ」とひきずり歩きました。加美〈かみ〉町、八千代〈やちよ〉町らをとおり、中町糀屋〈こうじや〉まできたところで夜が明けたので逃げて帰りました。
また、山寄上〈やまよりかみ〉から、どの田んぼにもお供えをくばって、加美町、八千代町、そして中町曽我井〈そがい〉まできたところで夜が明けてしまったので逃げて帰ったともいわれています。
これらの、岩をひきずって歩いたところや、お供えをくばって歩いたところでは、田植〈たうえ〉がおわると田祭〈たまつ〉りという祭りをしていますが、あまんじゃこのとおらなかった村では、その祭りをしていません。
またあるときは、中町と加美町の境にある妙見山から、二里半(六キロメートル)ほど西の笠形山へ、夜のうちに橋をかけて村人たちをびっくりさせてやろうと思いたち、日が暮〈く〉れるのを待〈ま〉って、急いで土台〈どだい〉づくりを始めました。右の手で妙見山、左の手で笠形山というふうにどんどんと石を積〈つ〉んでいき、土台はみるみるうちにできあがりました。
「さあて、土台のつぎは丸太〈まるた〉を渡〈わた〉して橋はできあがりー」とそう思って、よく考えてみると、一里半ものそんな長い丸太がどこにもあろうはずがありません。さあて、困った、といろいろ考えているうちに夜があけてしまい、あわてて逃げて帰ってしまいました。そのために、土台はそのままおき去〈ざ〉りにし、いまもこれらの山の上には大きな岩の土台がのこっています。
またあるときには、これも夜のうちに中町にある岡〈おか〉山と大子〈たいし〉山の二つの山を同時〈どうじ〉にどこかへ捨〈す〉ててやろうと考え、長い石の天びん棒〈ぼう〉をつくり、
「よっこらしょ。」とになったところが、山が重すぎたため棒の片方の端〈はし〉が、山もろとも、「どさーっ」と落ちてしまいました。
そうこうしているうちに夜が明けだしてきたので、そのまま折れた棒の短かい方をすてて、逃げて帰りました。それが中町奥中〈おくなか〉にある長石〈ながいし〉だそうです。

またあまんじゃこは、とても気みじかでしたから、少しでも気に入らぬことがあると、すぐにかんしゃく玉〈だま〉をばくはつさせて火の雨を降らせました。なんでもかんでも手あたりしだいに八つあたりにして、ごうごうという地鳴りや大地しんをまきおこし、天を真赤〈まっか〉にこがして、たつまきのような火の雨をいく日もいく日も降らせました。そのたびにほうぼうで、山くずれや火の海の大洪水がおこり、地面のようすがすっかりかわってしまうことがありました。
そんなとき、いつもめいわくをするのは人間のほうで、うっかりして逃げおくれ、火の海の大洪水にでもまきこまれようものなら、真黒こげに焼けただれて死んでいくよりほかありませんでした。ですから、人間たちは、地鳴りや地しんがおこりだし、あまんじゃこが火の雨を降らせそうな気配〈けはい〉がすると、なにもかもすてて、いちもくさんに安全なところへ逃げていき、じいっとかくれていました。
中町の田〈た〉の口〈くち〉というところには、今もたくさんの古墳〈こふん〉がのこっていますが、それは、むかしの人が、あまんじゃこの降らせる火の雨をさけて、かくれ住んでいたところだそうです。

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