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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 尾上〈おのえ〉の鐘〈かね〉(加古川市尾上)

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更新日:2013年2月25日

尾上〈おのえ〉の鐘〈かね〉(加古川市尾上)

尾上〈おのえ〉や高砂〈たかさご〉附近は、加古川のつくったデルタ地帯で、古くから「松の名所」として知られています。このうち、高砂神社と尾上神社には「相生〈あいおい〉の松」と呼ばれる雌雄〈しゆう〉同じ株〈かぶ〉の名松があり、大正の末年、文部省から天然〈てんねん〉記念物に指定されました。おめでたいときにうたわれる謡曲〈ようきょく〉「高砂」は、この松の精〈せい〉である尉〈じょう〉と姥〈うば〉が偕老〈かいろう〉(夫婦なかよく生きて年をとる)のよろこびを語りあったものです。
尾上神社には、このほか、朝鮮〈ちょうせん〉から渡ってきた釣鐘〈つりがね〉があり、重要文化財となっています。土地で伝えている話をつぎに記してみましょう。

この釣鐘は、竜宮〈りゅうぐう〉からきたものです。
ところが、今から数百年の昔、海賊〈かいぞく〉がこの鐘を盗〈ぬす〉み、船に積んで逃げました。そして、四国の西南端、足摺岬〈あしずりみさき〉まできますと、急に大風が吹き、今にも沈みそうになりました。海賊たちは、
「これは、竜宮におられる竜神さまがほしがっていられるにちがいない。」
と、鐘を海中に投げこみました。すると、ふしぎなことに、荒れていた海が静まり、海賊は命拾〈いのちびろ〉いをしました。

これからのち、この地に、困ったことが続きました。夜になると海中が光るのです。魚は、そのため、みんな逃げてしまい、漁〈りょう〉が少しもできません。漁師〈りょうし〉は困り、何が光るのだろう?と海人〈あま〉をもぐらせて調べさせますと、大きな釣鐘の沈んでいることがわかりました。
「これだ。これをひきあげよう。」
と、大勢の海人たちは力をあわせてひきあげました。見ると、尾上神社の鐘でした。人びとはおどろいて、もとの尾上神社へ送りとどけました。
こうしたことがあってから、尾上神社のこの鐘は、毎夜、子〈ね〉の刻〈こく〉(夜の十二時)になりますと、だれもつかないのに鐘の音をひびかせます。このあたりの海を「ひびき灘〈なだ〉」というのは、こうしたことからきたものです。

(『日本伝説叢書』明石の巻)

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