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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 青池〈あおいけ〉の竜〈りゅう〉(明石市大久保町)

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更新日:2013年1月7日

青池〈あおいけ〉の竜〈りゅう〉(明石市大久保町)

中谷町に、青池〈あおいけ〉という池があります。むかしから、日でりのときでも、一度も水のかれたことがありませんでした。村びとは、ふしぎな池と思っていましたが、しまいには池に主〈ぬし〉がいると信じるようになりました。とはいっても、だれも池の主を見たわけではありません。

ある日、森田村の百姓〈ひゃくしょう〉が、畑仕事〈はたしごと〉を終〈お〉えて、くわを洗いに池へおりてきました。百姓は、ざぶざぶとくわを洗いました。水面に青いしまもようが、広がっていきました。
「やれやれ、これでおしまいにしよう。」
百姓が最後のひとすすぎに、くわをゆすったときのことです。三十センチメートルばかりのヘビが、池から出てきて、くわの柄〈え〉にのぼってきました。
百姓は、びっくりして、二度三度払〈はら〉いのけようとしましたが、ヘビは逃〈に〉げようともしません。百姓は腹をたてて、くわの柄〈え〉の先でヘビの頭を打ちすえました。すると、ヘビは池のなかへとびこみ姿を消してしまいました。
百姓は、何となく気味〈きみ〉が悪くなって家へとんで帰りました。

「ああ、おそろしや。」
百姓は、表の戸をしめ、ほっと息をつきました。
そのときです。戸のすき間から、するどいいな光りがさしこみ、落雷〈らくらい〉が続いて、土間〈どま〉が大きくゆれ動きました。百姓は、生きた心地をうしないかがみこんでしまいました。
黒雲がわき上〈のぼ〉り、くらやみとなり、大雨が、百姓の家をたたきました。
そのときです。すさまじい風が、百姓の家を吹き上げてしまいました。家はまっくらな雲のなかへ消えてしまいました。
大空を引きさくようないなずまが走ったとき、こなごなに散っていく家の板〈いた〉や柱〈はしら〉が、遠くにちらっと見えて消えました。
百姓は、よろめきながら立ち上がって、家がとび散った方へ大声でさけびました。その声は風に吹きちぎられ、かみなりの音に打ち消されてしまいました。
百姓は、足もとから力が抜けていくように感じました。
そのときです。大地がわれんばかりの大きな音がして、ものすごいいなずまが天から青池にまっすぐに立ち、それにするどいつめをつきたてて竜〈りゅう〉がのぼっていきました。百姓は、ふたたび気をうしない、たおれてしまいました。

この夜、百姓のすんでいた森田の家十三けんは、南の海岸の江井ケ島のあたりまで、吹きとばされてこなごなになっていました。
あくる日、村の人びとは、おそるおそる青池のほとりに行ってみました。水色の大きな「うろこ」のようなものが、六・七枚つらなって落ちていました。村の人たちは、竜の「うろこ」だろうといって、このふしぎなできごとにおどろきました。そして、池の主のむくいのおそろしさにおののきました。

(明石市史から)

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