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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 鯉〈こい〉と長者〈ちょうじゃ〉(滝野町高岡)

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更新日:2013年1月28日

鯉〈こい〉と長者〈ちょうじゃ〉(滝野町高岡)

「バシャ、バシャ。」ものすごい水音がしました。高岡〈たかおか〉村の長者〈ちょうじゃ〉やしきのすぐ前、天下溝〈てんかみぞ〉のあたりです。ひるねからさめた下男〈げなん〉が、だるそうな目でふとみぞをのぞいてみますと、大きな鯉〈こい〉が背〈せ〉びれを水から出して、くるしそうにもがいていました。
「鯉や、大鯉がいるぞー。」
下男は大ごえでみなをよびたてました。納屋〈なや〉から、酒蔵〈さかぐら〉のかげから、大ぜいの男たちが網〈あみ〉やかごをもってとび出してきました。男たちは、かみとしもてにわかれて、この大鯉を追いたてましたが、鯉は水をとばし、足のあいだをすりぬけ、人の顔をうつなどして必死〈ひっし〉ににげまわりました。やっとのことで、徳平〈とくへい〉という下男が体ごと組みつきつかまえてみますと、一~二メートルにもあまる化物〈ばけもの〉のような鯉でした。
「平池〈ひらいけ〉のぬしやで。たたるかもしれへん。放してやろやないか。」
などという者もいましたが、みなは晩のごちそうにすることにきめてしまいました。長者も出てきてさんせいしました。三枚におろし、あらいにしますと、何と四十人分もとれました。さすがに人数の多い長者やしきでも食べきれなかったので、近くの親せきへもくばり、おおいに舌〈した〉つづみを打ったのです。

その年の冬、長者やしきで作りかけていた酒が、ぜんぶ、どうしたことかくさってしまいました。そして、つぎの年の春、下男の徳平がぽっくり死にました。その夏は日照りがはげしく、水によわい高岡村は一つぶの米もとれませんでした。長者やしきの酒作りの失敗は、そのつぎの年も、またそのつぎの年も続きました。こうして、長者はすっかりびんぼうになってしまいました。
村びとたちは、鯉のたたりであるとうわさしあったそうです。

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