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更新日:2012年6月1日

父さがし(多可郡中町)

むかし、道主日女命〈みちぬしひめのみこと〉という神さまが父親のない子どもを産みました。
その子どもは、だんだんと成長してくるにつれて、ほかの神さまの子どもには、みんなお父さんがいるのに、私だけにどうしてお父さんがいないのだろうか、と不思議〈ふしぎ〉に思うようになり、たびたび母神さまにたずねましたが、

「お母さんも知らないのよ…。」と答えるだけで何も教えてくれず、そのたびに子どもは、ますますさびしい思いをし、何とかしてお父さんに逢いたい〈あいたい〉、という一念〈いちねん〉にかられ、父を探し出す良い方法はないものだろうかと考えるようになり、そして考えついたのが、国中の神さまを招いて酒もり〈さかもり〉の宴〈えん〉を開いて父を探し出す、ということでした。
ところが、酒もりをするといっても、いまのように酒店へ行きさえすれば、酒がいくらでも手に入るという時代ではなく、何しろ神代〈かみよ〉のことですから、まず荒地〈あれち〉をたがやし、田を作り、稲を植え米をとって、それで酒を作るのですからなかなか大へんなことです。

すぐに、七つの田んぼを作り、田植〈たうえ〉も終りました。すると、七日七夜の間に稲が成長して米が豊かに実のりました。さっそくそれで酒を作り、国中の神神さまを招き待ちのぞんでいた酒もりの宴を開きました。
その席で、天目一命〈あまのまひとつめのみこと〉に盃〈さかずき〉をさし出したところ、「わしが、お前の父親だよ…。」といって、盃を受けとりました。
いきなりそのようにいわれたものですから、子どもは一瞬〈いっしゅん〉、うれしさと不安とが入り混ったような複雑な気持ちになり、ただあつけにとられていました。が、やがてわれにかえると、父親にやっと逢えた喜びの涙にむせびました。
米をとった田んぼは、その後すっかり荒れ果てて、またもとのような荒地になってしまいました。
「荒田〈あらた〉」という地名はそのためについたのだそうです。
今は「安楽田〈あらた〉」と変っています。

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