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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 雌鹿〈めじか〉の松(明石市林崎町)

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更新日:2012年11月19日

雌鹿〈めじか〉の松(明石市林崎町)

林のびしゃもんさんで知られている宝蔵寺〈ほうぞうじ〉の境内〈けいだい〉に、昭和二十年まで大きな松が、広く枝をはっていました。今は、戦災〈せんさい〉でみきだけがのこっています。そのそばに、「雌鹿〈めじか〉の松の歌」をほりつけた石がたっています。

むかし、林に大きな松林があって、そこに「おささ」という雌鹿がすんでいました。海をへだてて小豆島〈しょうどしま〉に雄鹿〈おじか〉がいて、たがいに行き来していました。(今も、明石の林から小豆島へかけて、海上百二十キロメートルは、浅い瀬〈せ〉になっていて、鹿の瀬とよばれて、明石ダイや、いろいろな魚がとれる所です。)

林村の漁師〈りょうし〉の久左衛門親子〈きゅうざえもんおやこ〉が、この鹿の瀬に舟を浮かべ釣〈つ〉りをしていました。すると、急に空が曇〈くも〉り、風も強くなってきました。いそいで、小豆島の入り海に舟をこぎ入れ、風の静〈しず〉まるのをまっていました。
そのとき、美しい娘〈むすめ〉さんがきて、「わたしも林のものです。いっしょにのせてかえってください。」と、たのむのです。久左衛門は、自分の村で見たことがなかったし、あまりの美しさにあやしみましたが、「わたしは、あなた方〈がた〉をよく知っていますよ。」というので、舟に乗せてやりました。
けんめいに舟をこいでいましたが、娘さんの方をふりむいたとき、漁師はびっくりしました。
今までの美しい娘さんが、白鹿にかわり舟の中で寝〈ね〉ているではありませんか。親子は、あまりのおそろしさにうろたえました。舟では、四つ足をたいへんきらうからでした。それで殺してしまおうかと相談していますと、鹿は、ぱっと目をさまして海へにげようとしました。親子は、ほうちょうで鹿のわき腹をさして海へなげこみました。
鹿は、「わたしを林の浜まで送ってくれたら、子孫七代の間、金持ちにしてやったものを、情〈なさけ〉もなくわたしを殺そうとしたから、子孫七代までほうちょうで、けがをして命〈いのち〉をおとすであろう。」と、いって小豆島へもどっていきました。しかし、小豆島の岸には、大きな犬がいて上がることができません。とうとう鹿は、よわって海へ沈んでしまいました。
そのとき、急に暴風雨〈ぼうふうう〉がおこりましたが、漁師は、命からがら林の浜までたどりつきました。

その後、あらしは幾日〈いくにち〉もやみません。漁師は、のろわれているのではないかと不安になり、十七日間も氏神〈うじがみ〉さまへお祈りのため通いつづけました。満願〈まんがん〉の夜、「お前のころした白鹿は、赤石となりうらんでいるぞ。」と、神さまからゆめのおつげをうけました。
そこで、親子は、白鹿の冥福〈めいふく〉をいのるために、塚がわりの松を植えたので、人びとは雌鹿の松と呼ぶようになりました。

(林崎村誌・宝蔵寺縁起・郷土明石・明石市史から)

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