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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 脇川〈わきがわ〉の念仏水〈ねんぶつみず〉(三木市細川町脇川)

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更新日:2012年10月22日

脇川〈わきがわ〉の念仏水〈ねんぶつみず〉(三木市細川町脇川)

昔、弘法大師さまが、修業〈しゅぎょう〉の旅の途中、この脇川〈わきがわ〉の村にさしかかりました。谷あいを拓〈ひら〉いたわずかばかりの田や畑には、日やけした作物〈さくもつ〉がひょろひょろとのびていました。いかにも貧〈まず〉しそうな村のようすに心をいためながら、なおも歩きつづける弘法〈こうぼう〉さまは、のどのかわきをおぼえました。どこか飲み水を恵〈めぐ〉んでくれる家はないかと、あたりを見まわしました。向こうの山かげに一軒〈けん〉の家が目につきましたので、弘法さまは、重い足をひきずりながら入口に立ちました。弘法さまは頼みました。
「もしもし、旅の者じゃが水を一杯〈ぱい〉飲まして頂〈いただ〉けまいかの。」
うす暗い部屋から現われたお婆〈ばあ〉さんは、門口〈かどぐち〉に立った弘法さまの、あまりにもみすぼらしい姿に、ちょっと驚〈おどろ〉いたようでした。
「まあまあ、お疲〈つか〉れでございましょ。縁〈えん〉に腰〈こし〉をおろして、しばらくおやすみなさいませ。お水は今持って参りましょうに。」
お婆さんはこころよく、そういって姿をかくしました。弘法さまは、ふところに風を入れながら、台所のあたりで水がめの水をくむ音を聞くともなく聞きました。その音は、かめの水の乏〈とぼ〉しさを伝えているようでした。やがてお婆さんは、かけた茶わんに入るだけの水をみたしてさし出しました。
「さあ、飲んでくだされ。遠慮〈えんりょ〉なさらずに。おかわりもいたしましょ。ただ新らしい茶わんがないので、私のでがまんしてくだされ。ふだん私が口をあてていますので、このかけた所からお飲みください。」
弘法さまは、ごくごくと、おいしそうに飲みほしていいました。
「いや、ありがとうよ。おかげで、ずんと元気が出てきましたよ。ところで婆さん。この村は田や畑の作物の出来がよくありませんの。なぜだか、わけを話してくださらんかの。」
お婆さんは、水が乏しいために村がこまっているのですと答えますと、弘法さまは、
「じゃあ、お礼にわたしが水を出して進〈しん〉ぜよう。」
といって、山すそのくぼんだ所へ、持っていた独鈷〈とこ〉(杖〈つえ〉)をつきさしました。すると、今まで水のわかなかった所から、こんこんと清らかな水があふれ出たのです。それを見とどけた弘法さまは次の旅へ立たれました。このお坊さんが弘法さまだったことを、あとで知った村人は、わき水のそばに小さな祠〈ほこら〉をつくっておまつりしました。

今でも脇川の教海寺という真言〈しんごん〉宗の寺の入口に近く、道の左側の小高いところに残っています。村人は、いつも、ぶつぶつと念仏〈ねんぶつ〉でもとなえるような音をたてて水がわき出ますので念仏水と名づけました。この水が流れて小川になり、どんな日照りにも涸〈か〉れることがなく、一定の温度を保っているとつたえています。脇川という村の名前も沸〈わき〉川から生れたのでしょう。

(教海寺縁起〈えんぎ〉の弘法遺跡〈いせき〉名をもとに)

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