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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 狼〈おおかみ〉からのがれた少年(三木市志染町井上)

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更新日:2013年2月11日

狼〈おおかみ〉からのがれた少年(三木市志染町井上)

昔は、旅まわりの占〈うらな〉い師〈し〉が、よく村村をたずねてきたものです。村人たちはまた待ちかねたようにおしかけて、いろいろと悩〈なや〉みごとを占なってもらうのでした。

ある時、この村にも占い師がまわってきました。多くの村人にまじって、たいへん貧〈まず〉しい一人の母親の姿がありました。たったひとりの息子〈むすこ〉の将来が知りたくて、胸をどきどきさせながら占い師の前に立ちました。しかし占い師の言葉はかえって母を悲しませました。この子は十二月一日に命をおとすというのです。思いがけない宣告〈せんこく〉に、母は気がくるいそうになりました。といって、どうすることもできません、ただ無事を神や仏にいのりつつ、その日を待たねばなりませんでした。

やがて、そのいやな日になりました。ちょうどその日は、村の共同作業でしば刈〈か〉りをする日でした。
一軒〈けん〉の家から一人はかならず出て仕事に加わらねばならないさだめです。さわぐ心をおさえて母は、カラスの鳴かぬまに起きて、仕事に出る息子のために弁当をつくりました。小豆〈あづき〉のご飯になすびのつけものをそえて、それはそれは、どっさり持たせてやりました。

少年は山に行きました。おとなたちに負けまいと少年は自分の持ち場を、しゃにむに進んでいきました。いつの間にか、村人たちの声さえ聞えぬところにきていましたが、少年は気づいていません。その時です。一匹の大きな狼〈おおかみ〉が、しのびより今にもおそいかかろうとしました。しかし、いち早くその気配〈けはい〉を感じた少年はかまをすてていちもくさんに逃げ出しました。村人を呼ぼうにも遠く離れすぎています。狼は追いかけてきます。距離〈きょり〉はだんだんにちぢめられます。
「あっ!あぶない!」
とっさに少年は腰の重い弁当を投げ出していました。身軽になった少年は、どんどん走ります。ふと気がつくと狼の追ってくるようすも見られません。不思議に思ってふり返りますと、狼は弁当包みをくわえてしげみに姿を消していくのでした。命拾いをした少年は、気が抜けたように、その場にへたばってしまいました。

夕方、お腹をすかして帰った少年は、母に昼間のおそろしかった話をくわしくしました。
「これで厄〈やく〉をのがれることができたんや。よかった、よかった。」
と、母は息子を抱〈だ〉きかかえながら大喜びをしたということです。

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