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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 万八狸とお万狐(吉川町金会・市野瀬)

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更新日:2012年6月1日

万八狸とお万狐(吉川町金会・市野瀬)

二瀬川〈ふたせがわ〉の黒滝〈くろたき〉(金会〈きんかい〉)に万八狸〈まんはちたぬき〉が住んでおりました。たいそうおちゃめさんで、川ばたの道を通る人びとにあいきょうをふりまいて、村人からかわいがられていました。
となり村(市野瀬〈いちのせ〉)の小山には、お万狐〈まんきつね〉がいて化ける〈ばける〉のが得意〈とくい〉でした。
ある時おたがいに術〈じゅつ〉くらべをすることになりました。勝った者がこの谷の大将になる約束〈やくそく〉です。
ほそぼそと続く街道を、東にたどると赤松峠〈とうげ〉をこえて摂津〈せっつ〉の国に通じます。お万狐はこの峠もなわ張りです。
夕ぐれになると、いくつもいくつもちょうちんの火が続き「下にー、下にー。」の声も聞えるようです。どうやら小野か三草の殿〈との〉様がお江戸〈おえど〉へ旅立たれる行列らしいのです。

大ぜいの供ぞろえと見えて、よく朝あけ方までつづきました。
お万狐は鼻高だかと、「どうだ、降参〈こうさん〉したか。」と、いいました。
万八狸は、「大そうなうでまえだが、わしの方は、しばらくまってくれ。」と、さわぐ色もありません。
おりから黄ばんだ麦の取り入れにいそがしかった村人は、刈り取ったたんぼに、すぐため池から水を引いてきてなえを植えつけました。吉川谷を見わたすかぎり青田にするのになん日もかかりません。
万八狸は、お万狐をさそって峠の頂上〈ちょうじょう〉から谷間をさしながら、「どうだい、先ほどのちょうちんの数と、この青田の続く広さをくらべて見たら。」
まったく万八のいうとおりです。ついこの間まで麦畑ばかりだったのが、がらりと変っています。
お万はてっきり万八の術だと思い、「なんだこんなたんぼ、わしがふみまわったらたちまち消えてしまうぞ。」と村村のいな田をとびまわりました。
「ケン、ケン、クワン、クワン。」と、さけびながら、どんどん走りまわりました。でもいっこうにいな田は消えるどころではありません。
たんせいして植えつけた田んぼをふみあらされた村人は火のようにおこって棒やくわを持ち出し、大ぜいでとうとうお万狐を取りおさえてしまいました。
「もう決してこんなことはしません、どうかお許しを。」と泣き声をあげました。
万八狸は、その後も滝つぼの岩の上で美しいむすめさんになって糸車をまわしたり、小僧〈こぞう〉さんになって、まる木橋をわたる人の手を引いたり、みんなから感謝されて、いまも滝〈たき〉のかたわらに「万福〈まんぷく〉大明神」として祭られています。

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