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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 天神くずれ(多可郡加美町、西脇市日野町)

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更新日:2012年12月17日

天神くずれ(多可郡加美町、西脇市日野町)

「おおい、えらいこっちゃ、天神さんが社〈やしろ〉ごと流〈なが〉れてしまう―。」
むかし、清水〈きよみず〉村は大洪水〈だいこうずい〉に襲〈おそ〉われて、村のほとんどが流され、村は右往左往〈うおうさおう〉の大騒〈おおさわ〉ぎとなり、村人たちはとるものもとりあえず近くの山の上へと逃〈に〉げ登〈のぼ〉り、つぎつぎと濁水〈だくすい〉に呑〈の〉まれてゆく自分たちの家や田畑をどうすることもできぬまま、うらめしそうに見下〈みおろ〉していました。と、その時、とつぜんものすごい音とともに村の西南に突〈つ〉き出ていた山がくずれ、その突端〈とったん〉に祀〈まつ〉られていた天満〈てんまん〉神社が社もろとも濁流〈だくりゅう〉の中へ押〈お〉し流されてしまいました。
そのありさまをつぶさに見た村人たちは、
「霊験〈れいげん〉あらたかな守〈まも〉り神でさえ流されるんやさかい、わしら人間どもの家や田んぼが流されるのはあたり前のこっちゃ・・・。」
と、呆〈あき〉れはてたとも諦〈あきら〉めともつかぬ言葉〈ことば〉をはくのでした。

やがて、幾日〈いくにち〉かが過〈す〉ぎたある夏のことでした。日野村前嶋〈ひのむらまえじま〉では賑〈にぎ〉やかな夏祭〈なつまつ〉りが催〈もよお〉され、近くの村村からは老若男女〈ろうにゃくなんにょ〉がどっとつめかけて踊〈おど〉りの輪〈わ〉が幾重〈いくえ〉にもできて、はずんだ太鼓〈たいこ〉の音がいちだんと祭りをもりあげていました。
「きょうは何の祭だんにや(ですか)。」
と、聞いてみますと、
「天神さんの夏祭りだんにや(ですよ)。」
との答えが返〈かえ〉ってきました。
はて、たしかにここには天満神社などなかったはずだがと思っていると、この前の大洪水のときに天神さんが社ともども流れついたので祀〈まつ〉ったのです、と教えられて、よく見ると、それはまさしく清水村の天満神社でした。あの大洪水のときに杉原川〈すぎはらがわ〉をいっきに下〈くだ〉って、ここ前嶋村に留〈とど〉まったのです。
それからずうっといままで、天満神社は前嶋村の氏神〈うじがみ〉として祀〈まつ〉られてきました。
いっぽう、清水村ではもと天満神社のあった土地のあたりをいまも「天神くずれ」という呼び名でよんでいます。また、天満神社が濁流〈だくりゅう〉にのまれたあたりを「渦〈うず〉のもと」といっています。

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