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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』神戸編 > 鹿〈か〉ノ子〈こ〉温泉〈おんせん〉(兵庫区長尾町)

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更新日:2013年2月11日

鹿〈か〉ノ子〈こ〉温泉〈おんせん〉(兵庫区長尾町)

長尾〈ながお〉町の江原〈えいばら〉という所に、鹿〈か〉ノ子〈こ〉温泉〈おんせん〉という小さな温泉があります。
木木の茂った静かな温泉で、近ごろは都会のそうぞうしいのを嫌〈きら〉って、大阪や神戸からくる人も多いようです。ところが、この温泉については、次のようなことが伝えられています。

ある秋のことでした。この近くの山の中で、母と子の鹿〈しか〉が木〈こ〉の実〈み〉などをひろって遊んでいました。
すると突然〈とつぜん〉、一匹の大きな熊〈くま〉があらわれて子鹿の足をかみました。驚いたお母さん鹿が子鹿をかばおうとすると、こんどはお母さん鹿の胸に、ガブリとかみつきました。
そのとき近くで、猟師〈りょうし〉のうった鉄砲〈てっぽう〉の音がしたので、熊はあわてて山の中へ逃げてしまったのです。お母さん鹿はたちあがって、メイメイないている子鹿に、
「しっかりおし。お母さんが、その足の傷〈きず〉がなおるようにしてあげるから。」
といってよろよろしながら、子鹿をくわえて歩いていきました。胸の傷からは、どくどく赤い血がながれています。あえぎあえぎ谷をおりて、きれいな清水〈しみず〉のわいている所へくると子鹿に、
「よいかえ。この清水で、幾度〈いくど〉も幾度も傷口を洗うのですよ。きっとよくなるからね。」
といって、そのまま息〈いき〉を引きとりました。子鹿は、死んだお母さん鹿のそばにいて、足を清水につけながら、悲しそうにメイメイとなきつづけていたのです。
そのようすをみた村人たちは、かわいそうに思ってその近くに、お母さん鹿の墓〈はか〉をつくってやりました。すると子鹿はその墓のそばにいて、ときどき清水に足をつけながら、やはり悲しそうにないていました。そうして幾日かすぎると、足の傷がなおったのか、どこかへいってしまったのです。

村人たちが、その清水をくんで使ってみると、病気や体にひじょうによいことがわかりました。それから後、人びとはこの清水をくんでお風呂〈ふろ〉に入れるようになりました。また、子鹿がないていたことから、この谷を鹿〈か〉ノ子〈こ〉谷〈だに〉とよぶようになったのです。
これが現在の鹿ノ子温泉のはじまりだといわれています。

(『有馬郡誌』・『有馬郡の伝説とその背景』)

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