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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』神戸編 > 有馬〈ありま〉くもの滝〈たき〉(兵庫区有馬町)

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更新日:2012年12月10日

有馬〈ありま〉くもの滝〈たき〉(兵庫区有馬町)

それはそれは、遠いむかしのことでした。
湯〈ゆ〉の町有馬〈ありま〉に一人の木こりが住んでいました。その木こりは毎日毎日、明けても暮れても年がら年中湯の山の奥へ行っては木を切り、柴〈しば〉を刈っては町の人に売って暮していました。

ところが、町の近くの山はだんだんと柴も少なくなりましたので、ある日、行ってはいけないといわれている鼓〈つづみ〉が滝〈たき〉の奥へ柴をさがしにのぼっていきました。流れにそって渓流〈けいりゅう〉をしばらく行くと目の前に、水けむりを立て、真白な布が落ちているような美しい滝がありました。
めったに人が行かないのでしょうか、滝のあたりは一面に木がしげり、うっそうとしていました。木こりはすっかりよろこんで、さっそく木を切りたおしたくさんの柴をこしらえました。
やがて昼になったので木こりは滝のそばで弁当を開いて、滝しぶきを身にうけながら食事をしました。それは、とっても暖かい春の日のことでした。春の日ざしをまにうけて食事をし、腹一ぱいになった木こりは、滝つぼに足先をつけながら心地よく、そのままうとうとと眠ってしまいました。
どれほどの時刻が過ぎたころだったのでしょうか、滝つぼの中からとつぜん一匹のくもがはい上ってきました。そのくもは、木こりが滝つぼに足を浸しているところへ近づき、口から糸を出し木こりの足へせっせと糸を何回も何回も巻きつけ、やがてそのままくもは、滝つぼの中へ姿をかくしてしまいました。
心地よさそうに眠っていた木こりは、やがて目をさまし、立ちあがろうとしましたが足が動きません。はて何か足にくっついているとさわってみました。驚いたことに、くもの糸が両足を何回も巻いていました。
「なんだい、いい気持で昼ねをしていたのに。」
木こりは腹立ちげに足に巻きついたくもの糸をほどいて、そばにある大きな木の切り株へひっかけました。
「やれやれ、やっとほどいた。これはうかつに昼ねもできないなあー。」
と木こりがひとりごとをいいながら、くもの糸を巻きつけた切り株を見たときでした。
とつぜん滝つぼの中から大きなくもが頭を持ちあげ、糸をぴんとはりました。そして、くもはたくさんの足で糸をたぐりよせ始めました。すると、滝つぼの水は怒涛〈どとう〉のようにさか巻き、くもの糸のかけられた切り株は、ぐんぐんとくもの方へ滝つぼの中へと引きよせられて、とうとう大きな切り株は、滝つぼの中へ姿を消してしまいました。それをじっと見つめていた木こりは、
「足に巻きついたくもの糸をもしほどかなかったら、この私が殺されるところだったのだ。」
と、恐ろしさに肝〈きも〉をつぶして見つめていました。やがて滝つぼはもとの静けさにかえり、大きなくもも姿を消したので木こりは我〈われ〉にかえり、取るものも取りあえず、いちもくさんに家へ逃げて帰りました。

この話は、またたく間に有馬の町に広がりました。そして誰いうとなく、その後はこの滝のことを「くもの滝」とよぶようになりました。

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