• お問い合わせ
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • サイトマップ
  • 携帯サイト

メニュー

ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』神戸編 > 吉さんとガッタラ(垂水区神出町)

ここから本文です。

更新日:2012年6月1日

吉さんとガッタラ(垂水区神出町)

青池という深い深い池があります。名前のとおり、水は底まで青く、よく澄んでいるのに底の方は見ることができません。
なにしろ、山の中の池ですから、水がかれて、池の底がひあがったとういことをまだきいたことがありませんので、村の人びとはおそれていました。おそれるわけは、この池に何がすんでいるかわからないからです。
池の主〈ぬし〉がいるという人もあります。それは、年老いた一匹の大蛇のすがたをしているというのです。
スッポンがいるという話もあります。スッポンというのは亀によくにた動物ですが、甲らは、かめのようにかたくなく、ゴムのようになっていて、全体がぬめぬめしたかんじです。
スッポンは、町でスッポン料理として売り出しているところもありますから、現在でも、あちこちの池や沼にいるわけです。実在の動物ですが、かめとちがって、時には人間にくいついていくこともあります。指などにくいつかれると、ちぎれてしまうといわれています。また所によっては、スッポンにかみつかれると、かみなりが三回鳴らないことにははなさない、ともいわれています。
なにしろ、村の人たちにとっては、うす気味の悪いことです。大蛇にしろ、スッポンにしろ、あまり気持ちのよい相手ではありません。
困ったことに、この青池は水が青いので、どこか子どもの心をひきつけるところがあります。
山の谷にできた池のことですから、岸から一直線に深みになり、泳ぎの力の弱い子どもたちでは、おぼれる心配もあるわけです。急こうばいの池を、「すりばち池」といいます。その上に、何がすんでいるか知れたものではないので、青池は魔〈ま〉の池とされていました。
そのうちに、青池には、ガッタラがいるといううわさがたちました。ガッタラというのは、ガタロウとか、川太郎とかいわれるものの仲間です。カッパとうい方がわかりがいいでしょう。
青池のガッタラは、子どもの姿になって時どき出てきます。子どもたちがおおぜいで出かけているようなときには姿をみせないで、ひとりで池に遊びにいったときなどに出てくるといわれています。口が少しとんがっていますが、ふんどしをしめたかっこうなどは、人間の子どもそのままです。
青池の岸で遊んでいますと、どこからともなく、知らない子どもが出てきて、そばへ寄ってきます。そばへくると、そっとお尻をさわり、お尻がやわらかいと、その子どもの尻を抜くというのです。

吉さんの子どものころです。
吉さんというおじいは、そのガッタラに一度だけ出会ったというのです。
吉さんは、青池の岸で知らない子どもが寄ってきたら、それはガッタラだから、気をつけるようにと人からきいていました。吉さんは、元気ものの向こうみずだったので、どうしてもガッタラに、ひとあわふかせたいという気持ちがありました。
吉さんは、家を出るとき、土びんのふたをこっそりとふところにしのばせました。池の近くにきたとき、吉さんは、土びんのふたをとり出して、それを自分のお尻にあて、その上から、きつくふんどしでしばりました。
そして、平気な顔をして青池の岸に立っておりますと、何やら水がもこもこと動くのが見えました。
「やってきよるな。」吉さんははらの中でそう思ったので、右を見て左をみました。すると、いつの間にか、ひとりの子どもが吉さんのそばにたっています。
吉さんは平気なかおで、「あついな。」というと、その子ども、「あつい、あつい、ほんま。」といいながら、吉さんのそばへ寄ってきました。
吉さんは今だと思って、また、右を見て左を見ておりますと、その子どもはそっと手を出して、吉さんの尻をさわっています。
吉さんは、おかしくてしょうがありませんが、ぐっとこらえて、「あつくて、やりきれんわ。」と、ひとりごとをいって、ようすをうかがっていますと、その子どもが、「おまえ、かたい尻やの。」といいます。
「ああ、このごろは、ガッタラがよう出よるいうからの。あっはっはっは。」笑ったひょうしに、吉さんのふんどしがゆるんで、ふんどしの下の土びんのふたが、ぽろりと外へこぼれ落ちました。
「やっ。」というが早いか、吉さんはお尻をおさえて、いちもくさんに逃げてかえったというのです。
「なんや、うしろの方で、ガッタラが叫んどったようだ。」と吉さんは、話のおわりを結びました。
青池のガッタラを、その後見た人はないということです。

お問い合わせ

情報管理部広報係

電話番号:078-331-9962

ファクス番号:078-331-8022