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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』神戸編 > どんべら淵〈ぶち〉(垂水区押部谷町)

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更新日:2013年1月21日

どんべら淵〈ぶち〉(垂水区押部谷町)

押部谷〈おしべだに〉町の養田という村に、どんべら淵〈ぶち〉という水たまりがあります。ちょうど明石川の支流と本流とにはさまれた田の中にあります。池の直径は、十五メートルぐらいでしょうか。流れがありませんので、どろんとよどんだように見えます。お天気の悪い夕方などに、この池のふちに立ちますと、池の中からがたろう・・・・でも現われそうな水の色になります。なまり色の水面・・・こういいますと、どんべら淵から、妖怪〈ようかい〉でも出てくる話ではないかと思うでしょう。いいえ、どんべら淵は、もっと平和なお話の淵です。

もともと、この養田という部落は、古くから開けたところで、つい先日も古代の住居あとがみつかった、などといって新聞などがさわぎました。古墳〈こふん〉といって、四~六世紀ごろにつくられたむかしの豪族〈ごうぞく〉の墓などが、たくさんあります。あまりにたくさんあるので、地元長福寺の若い和尚さんなどは、すっかりこの古墳にみいられて、とうとう先年、自分の寺の中に、りっぱな考古館〈こうこかん〉を建てました。いなかのまん中にあるお寺に、考古館というしゃれた建物をもっているというのは、ほんとうにゆかいなことです。

話しが少し横道にはいりましたので、元のどんべら淵にもどりましょう。
ずっと昔のお話になります。このどんべら淵には、近くの山からおサルがときどきやってきていました。どんべら淵から北二キロメートルばかり山つづきに神出町の雌岡〈めっこ〉山という形のいい山があります。養田の地元の人たちは、サルがこの、雌岡山からやってきたのだといいます。
ところが、よくみると、どんべら淵をたずねてくるサルは、きまって子もちのサルだということです。ふしぎに思って、もっとよくみておりますと、サルは生まれたばかりの赤ちゃんをおぶって、雌岡山から、この淵へやってきていたのです。
どんべら淵は、もとは、すみきった水が、どこからともなく、こんこんと湧いておりました。山でお産をしたサルのお母さんは、そのまま赤ん坊ザルをおぶって、この淵にたどりつき、この淵の水で赤ちゃんを洗っていました。つまり、うぶ湯をつかっていたわけです。
雌岡山のサルは、丈夫ですくすくと育つので、地元の人たちは、
「サルが、どんべら淵で、うぶ湯をつかうからじゃろ。」
といいました。

この話は、人から人へ伝わりましたので、どんべら淵の水で、赤ちゃんのうぶ湯をたてると、その子が丈夫に育つだろうと考える人たちが出てきました。地元の人たちは、赤ちゃんが生まれるとこの淵の水をくみとって帰り、これでうぶ湯を立ててみました。すると、その子は、みんなすくすくと元気に育ったというのです。

そこで、どんべら淵の水は、お産になくてはならないようになり、近くの村むらからも、この水をくみにくる人がだんだんふえました。中には、何キロメートルもはなれた土地の人が、たずねてくることもありました。
今では、家でお産をする人がなくなりましたので、だんだんこの水をとりにくる人もへりましたが、たとえ病院でお産をしても、一度は、この淵の水を入れてお湯をたてるときめている人もあるようです。生きている民話のなかまにはいるでしょう。
どんべら淵もいまは、どんよりと曇って、どんより淵になっています。

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