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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』神戸編 > 夜泣〈よな〉き石(長田区)

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更新日:2012年12月10日

夜泣〈よな〉き石(長田区)

長田の奥から明泉寺〈みょうせんじ〉を通って白川へぬける古い街道があります。その途中に長坂というところがあります。ここに富士山の形をした石がありました。この石を長田村の若者たちがみつけて運び出し、長田神社の門のそばにすえました。長田神社に奉納して庭石にしてもらうつもりだったのです。
ところが、そのときの長田神社の宮司〈ぐうじ〉さんがこの石をみて、あまりにみごとな石なので、
「これは美しい石だ。お宮におくのもよいが、お宮にはほかにも石がたくさんあるし、ひとつわが家へもってかえって庭石にしよう。」
といって、奥平野にある自分のうちへもってかえりました。そして、家の庭にこの石をすえました。そして、「わが家に富士山ができた。」と喜んでながめていました。

その夜のことです。庭で泣き声がするではありませんか。
「エーン、エーン、長田へかえろ、長田へかえろ。」
宮司さんは驚いて障子をあけて庭をみまわしました。誰か人がいるのかと探してみましたが、誰もいません。
「なーんだ、気のせいだったのだろう。」
と思って、その夜は眠ってしまいました。
ところがどうでしょう。つぎの夜も、そのつぎの夜も、泣き声はやみません。
「エーン、エーン、長田へかえろ。」
宮司さんは庭中を探しまわりましたが、誰も人はいません。宮司さんは今宵〈こよい〉こそ、誰が泣いているのかつきとめようと決心して、一晩中眠らずに見はる覚悟〈かくご〉でいました。するとどうでしょう、また庭石のあたりで、
「エーン、エーン、長田へかえろ、長田へかえろ。」
という声がします。庭石のところへ飛んでいくと、庭石はびっしょりぬれていました。宮司さんは、
「ああ、悪いことをした。はやく長田へかえしてやろう。」
と思い、夜が明けるとすぐにおおぜいの人を集めて、長田まで運んでもらいました。こうして、この庭石は長田神社の境内にもどり、それからずっと、「夜泣き石」としてお宮の一隅にあります。

(『長田神社點描』)

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