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更新日:2012年6月1日
長田交叉点を東西に幅広い道路がついています。この道はむかしの西国街道です。江戸時代の参勤交代〈さんきんこうたい〉の大名行列はもとより、旅行する一般の人びとも往来〈おうらい〉した重要な交通路なのです。この道を交叉点から西へ行くと新湊川をわたり、山がわに長田区役所、長田消防署があります。その横に古めかしい鳥居や灯籠〈とうろう〉や狗犬〈こまいぬ〉があります。ここが長田神社の馬場先〈ばばさき〉で、表参道にあたります。ここにある鳥居〈とりい〉は慶安〈けいあん〉元年(一六四八年)に建てられたものです。この鳥居には、つぎのような伝説があります。
この鳥居が建てられたころ、ある村人がこの鳥居の建った場所が、長田大明神の敷地にないのに気づきました。そして、長田神社に申しました。「長田さま、馬場先にこんどできました鳥居は、長田さんの敷地に建てられておりません。他人の土地をおかすことはよくないと思います。」すると、どうでしょう。鳥居は夜の間にスルスルと動き、うしろへさがりました。だから鳥居の礎石〈そせき〉だけが、前にあったところに残ったといいます。ほんとうに、太平洋戦争前までは鳥居の位置から四、五メートルも前にありました。いまでも側〈そば〉にある灯籠や狗犬より鳥居がうしろにあるのは、その名残りだといえましょう。
(『長田神社點描』)
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