• お問い合わせ
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • サイトマップ
  • 携帯サイト

メニュー

ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > かづらおとこ(姫路市田寺)

ここから本文です。

更新日:2012年10月29日

かづらおとこ(姫路市田寺)

むかしむかしのことです。大へん気だてのよい明るい娘さんがいました。家ではよくお手伝いをしますし、美しいので近所でもひょうばんで、青年たちも、結婚したいと多くの人が交際を申し込んできました。
その中でひとりたのもしい青年があり、娘もこの人と心にきめて、二人はしだいに仲よくなっていきました。
しかし、父親はなかなかがんこなので、娘はこの話を簡単に父親に話すことができません。毎日きょうこそ、おとうさんに話して許〈ゆる〉していただこう。いやあした話をして許してもらおうと、一日一日とのびのびになり、そのうちに、さむさも感じるころになりました。月のきれいな夜のことです。娘はきょうこそと思って両親にお願いにいきました。
「おとうさん、私には好きな人があります。かれは大へんまじめで働きものの青年ですから一度会ってください。きっとおとうさんやおかあさんも許してくださるでしょう。ぜひ会ってかれとの交際をお許しください。」と、一生けんめいたのみましたが、両親は許してくれません。娘は、なげき悲しんで庭で泣いていました。

涙でうるんだ目で月を見ますと、月には美しいにじの輪ができて、いつもより美しくにっこりと、笑っているように見えました。娘は悲しいのも忘れて、月ににっこりと笑いかえしました。しばらくしますと、月のそばから手まねきしながら男の人がおりてきます。涙でうるんだ目でみますと、その男の人があの青年に見えてきます。娘はびっくりするとともに、こおどりしてよろこびました。青年は手まねきしながら、ぐんぐんと近づいてきます。娘はうれしくて、ぽおっとなりました。地上についたこの青年は、
「さあ、私といっしょに月の世界へのぼりましょう。」と、手をさしのべ、娘と手をとりながらすうっーと空へ上っていきました。あたりが急に明るくなったので、何事だろうかとびっくりした両親が縁側に出てみますと、娘が知らない男と空へ上っていくではありませんか。あわてふためいた両親に、にっこり笑いながら月の中へ入っていってしまいました。
じっと月をみつめていると、月のま横にひとつ赤い星が光っています。両親はやっと、この星が月に住む仙人〈せんにん〉の“かづら男”であることに気がつきました。

この話を聞いた近くの人たちは、月の輪の中に赤い色をした星がみえると、
「あっ、かづら男が見えるぞ、また娘をさそい出しにくるぞ。」と、注意しあい、この星が見えると、

お月長いとて眺〈なが〉めな女、
かづら男にまねかれな。

と、歌い注意しあいました。
この話によくにた話は、少しずつかわってはいますが、あちらこちらできかれます。

お問い合わせ

情報管理部広報係

電話番号:078-331-9962

ファクス番号:078-331-8022