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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 取っても尽〈つ〉きない七草〈ななくさ〉の種〈たね〉(福崎町)

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更新日:2013年1月7日

取っても尽〈つ〉きない七草〈ななくさ〉の種〈たね〉(福崎町)

仙人〈せんにん〉といえば、真白〈まっしろ〉い着物をきて、頭から白い毛をだらりたらして、これまた白毛〈しらが〉まじりの、ぼうぼうたるひげをはやしている姿を想像します。
仙人は、山深い森の中とか、高い山の洞〈どう〉くつとか、人気〈ひとけ〉はなれた水上〈みなかみ〉の谷間に住まいしているのがふつうです。
ところで、仙人といっても、川〈かわ〉の人〈ひと〉とかく川人〈せんにん〉のむかし話をひとつ。

それは、ずっとずっと細長い森と谷とのつづく草深い村のことでした。
「こんなに日照りがつづいちゃ、さっぱり、やりきれないや。」
「何とか雨がほしいもんだ。春から育てた作物が干〈ひ〉あがってしまう。」
「それどころじゃねえ。来年へ持ちこす、米や大豆〈だいず〉の種〈たね〉もとれんじゃないか。」
雨のないこと百日あまり、谷あいの農民は、すっかり弱ってしまいました。そして、とうとうその年は、秋になっても米はとれず、作物という作物はすっかり枯れはててしまいました。
その年の秋も終わりのころです。
ひとりの農民が、山へ薪〈しば〉を刈りにいきました。「おやっ?」と耳をすましました。
「あれは、何の音じゃ。」ざざざというひびきは小さいが、遠くへきこえる音、農民は音をたよりにいってみました。
「おやおや。」そこには、滝〈たき〉があったのです。音は滝の水の流れでした。下には滝つぼがあって、なんとまあ、手のきれるような冷たい水が、たまっているではありませんか。
百日あまりも雨がなかったのに、この滝はどうしたことだ・・・と農民は、水にひかれるように滝をのぼっていきました。
いってもいっても、水の源〈みなもと〉へたどりつきません。でも何時間か後に、やっと、たどりつきました。そして、またもやびっくりしました。
「お、おまえは、どこからきたのじゃ。」まさしく人間の声です。「ひえっ?」農民は逃げ腰になりましたが、
「いや、逃げなくてもよい。きくところによるとこの下の村は、とても水不足で、れんげ・たんぽぽどころじゃない、毎日のやしないの米の種までとれなんだそうじゃのう。」
みれば、例のひげぼうぼうの仙人です。
「わしは、ほかの仙人とちごうて、この谷川にいる川人〈せんにん〉じゃ。」
「は、はい。おっしゃるとおり、米も大豆も小豆も、秋まく作物の種もすっかり・・・。」
「とれなかったのじゃろう。かわいそうに。」といって、川人は近くの大きな杉の根っこを堀って一袋のつつみを出してきました。
「そら、これを持ってかえれ、この中に種がある。」といって、その袋を農民にあたえました。
「はい、はい、ありがとうございます。」といって農民が顔をあげたとき、そこにはもう川人の姿はありませんでした。
農民が村へかえって、その袋をあけてみますと、なかには、
春と秋にまく―米、ひえ、大豆〈だいず〉、小豆〈あずき〉、麦、粟、きび・・・という、七つの種がはいっていました。
農民たちは、よろこんでこの種を分けて田や畑にまきました。ふしぎなことに、この袋からは、取っても取っても、尽きることなしに種が出てきたということです。

それから後、この地方を七種〈なぐさ〉村といいました。七種〈なぐさ〉山(六百八十一メートル)七種の滝などがあり、播但〈ばんたん〉線福崎駅から西北六キロのところです。

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