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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > しょうりんさん(福崎町)

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更新日:2013年1月28日

しょうりんさん(福崎町)

“しょうりんさん”“しょうりんさん”と、子どもたちにも親しまれているお坊〈ぼう〉さんがありました。
「しょうりんさん、お話して・・・。」と、近所のこどもがやってきます。
「うん、よしよし、この前は何だっけな、うん、そうじゃ、かたきうちにいって、うまく、よう討たなんだけど、魂〈たましい〉が怪物〈かいぶつ〉になって、しかえしをしたという“菊の舞”という話じゃった。きょうは、どんな話にしょうかな?・・・。」と、しょうりんさんは、寺の庭石に腰をおろしてはなしはじめました。
庭の上を涼しい風が吹いていました。子どもたちは、しょうりんさんを取り囲みました。

「昔のことじゃ、あるところに馬鹿〈ばか〉な男が住んでおった。」
「ふんふん。」と子どもたちは、お互いにうなずきました。
「ある日、この男は、胡麻〈ごま〉を生〈なま〉のまま食〈く〉ったところが、あんまりまずいんで吐〈は〉き出してしもうた。
『こんな、まずいもんはない』といったので、そばにいた人が、『いや、胡麻というもんは、炒〈い〉ればうまいのだ』といって教えた。それを聞いた男は、さっそく胡麻をって食べたところが、とってもうまかった。」
「ふんふん。」「胡麻はれば、こんなに美味〈うま〉いんじゃから、胡麻をって蒔〈ま〉いたらきっと、うまいごまが生〈は〉えるんにちがいないと思うた。」「ふん、それで、った胡麻を土にいけたんかい?・・・。」と、子どもたちがききました。
「うん、そうじゃ。そして、じーいっと待っとったが、いつまでたっても、ちっとも生えてこなんだのじゃ。」
「あたりまえじゃ、ほんまに、あほやな・・・。」と、子どもたちは笑いました。

ある時、鹿三〈しかぞう〉という貧乏で父親のない子が、しょうりんさんをたずねてきました。
「おっかあが、おっかあが、腹が痛うて困っとる・・・。」とその子はいいました。
「そうか、お医者〈いしゃ〉さんに診〈み〉せる銭〈ぜに〉もないこっちゃろう。よしよし、これを煎〈せん〉じて呑〈の〉ましな。」
しょうりんさんは、すぐ裏庭の方へいって薬草をもってきて、鹿三にわたしました。それは、腹痛にきく、げんのしょうこ・・・・・・・の蔭干〈かげぼ〉しにしたものでした。

しょうりんさんは、村の人から慕〈した〉われ、なんでも相談ごとにのってやっていました。けんか、家の中のもめごと、心配ごとなどがおこると、何でも村の人たちがちえ・・をかりにきますし、しょうりんさんも気安くでかけていって、うまくまとめてかえってきました。
しょうりんさんには、お嫁さんがありません。ですから、あとをつぐ子どももいません。そのうちしょうりんさんも、だんだん年をとっていきました。
「わしはもう、生きていてもしょうがない。生〈い〉き埋〈う〉めにしてくれ。そうすりゃ、村人が歯痛〈はいた〉をおこしたときは、なおしてあげよう。わしを祭ってくれる村人の歯を丈夫にしてやろう。」村人はこれをきいて止〈と〉めましたが、なかなかきき入れません。
しかたなく、村人は、しょうりんさんの言葉どおり、白装束〈しろしょうぞく〉をしたしょうりんさんを、かん桶〈おけ〉に入れました。
しばらくは桶の中で、念仏の声がしていましたが、やがてそれもやむと、しょうりんさんは、息を引きとってしまいました。

村人たちは、そのあとをねんごろにとむらって、墓を作りました。その墓は、村人のみなさんから“しょうりんさん”と呼ばれ、歯の痛むときは、きっとおまいりしているといわれます。
神崎郡福崎〈ふくさき〉町にあって、いまはお墓のかたわらに、さか木が石碑〈せきひ〉をおおわんばかりにしげっています。

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