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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 謡曲『杜若』の怪(姫路市寺町)

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更新日:2012年6月1日

謡曲『杜若』の怪(姫路市寺町)

寛政〈かんせい〉年間(江戸時代)姫路藩主酒井家時代のこと、城下、寺町に西松源一郎という侍〈さむらい〉が住んでいました。どういうわけか、その屋敷〈やしき〉の前を夜更け〈よふけ〉に「杜若〈かきつばた〉」という謡曲〈ようきょく〉をうたいながら通ることを、昔から禁じていました。何か不吉〈ふきつ〉なことが起こるというのです。

ある夜、家中の亀山源五右衛門〈かめやまげんごえもん〉・石川平之丞〈いしかわへいのじょう〉という二人の侍が、そんなばかな話があるものかと、ひそかに相談してたしかめることにしました。二人は、夜更けを待って寺町に行き、源一郎の屋敷の門前で、例の「杜若」の謡〈うたい〉をろうろうと一曲うたいました。ちょうどうたい終えたとき、一陣の怪しい風がほおをなぜたかとおもうと、たちまちのうちに風が吹きつのって砂がまい上がり、嵐のようになってしまいました。でも、二人は恐れるようすもなく、「杜若」をうたい続けながら少しずつ進んで行きました。すると、急に後ろの方から、二人の声に合わせてうたう細い女の声が聞こえてきました。ふり返ってみますと、そこには青白い顔をして、骨ばかりかと思われるぐらいやせこけた女の人が、黒髪をふりみだして立っていました。さすがの二人も、その姿を見てぎょっとしました。女はすべるようにして二人の前にきて、「ここでは、昔から『杜若』のうたいを禁じていますのに、あなたがたは、なぜうたわれるのですか。ただでは帰しませんから、覚悟してください。」と、恐しい顔つきでいいました。

その形相〈ぎょうそう〉のすさまじかったこと、二人は胆〈きも〉を冷やしてしまいました。
でも、ここでひきさがるわけにはいきません。はげまし合って、「何を!」といいざま刀を抜いて〈ぬいて〉いきなり斬りつけましたが、その姿は、かき消すように見えなくなってしまいました。その上、あたり一面に霧〈きり〉が立ちこめたようになって、一尺〈しゃく〉(約三十センチ)さきも見えなくなりました。二人はその中で刀をふりまわして狂ったように斬り〈きり〉まくりましたが、どうしても進むことができません。同じ場所を二た時(今の四時間)ばかりもうろつていました。東の空が白むころになりますと、疲れはてて、その場に座りこんでしまいました。
衣服はずたずたにさけて乱れ、刀はまるでささらのようになっていました。
さすがの源五右衛門たちも、これにはあきれて、その後は出会う人ごとにこの話をして聞かせ、源一郎の屋敷の門前で「杜若」をうたうことをいましめたといわれています。

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