• お問い合わせ
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • サイトマップ
  • 携帯サイト

メニュー

ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 壇〈だん〉の浦地蔵〈うらじぞう〉(大河内町)

ここから本文です。

更新日:2012年10月29日

壇〈だん〉の浦地蔵〈うらじぞう〉(大河内町)

むかし、むかし、といっても、今から八百年ほど前のことです。
歴史の上では平安時代の後期で、天皇は、六条・高倉〈たかくら〉・安徳〈あんとく〉三代の間です。日本の戦争史の上では後世に長く語り伝えられている、源氏〈げんじ〉と平家〈へいけ〉のたたかいです。
 源氏平家のたたかいは
 先ず手始めは富士川よ
 ………………………。
などと、いまのおじいちゃん、おばあちゃんが子どものころ、親しんでうたっていたうたもあります。
源平〈げんぺい〉のたたかいについては、
“祇園精舎〈ぎおんしょうじゃ〉の鐘〈かね〉の音、諸行無常〈しょぎょうむじょう〉の響〈ひびき〉あり、沙羅雙樹〈さらそうじゅ〉の花の色、盛者必衰〈せいじゃひっすい〉の理〈ことわり〉を顕〈あらわ〉す、耆〈おご〉れる人も久しからず…”と語りつがれたあわれな物語り、すなわち“平家物語”(鎌倉時代の戦記物で琵琶〈びわ〉に合わせて、琵琶法師〈びわほうし〉の語る平曲として民間にしたしまれたもの)に、くわしく述べられています。
それらのことについては、いずれみなさんも成長するにつれ、社会科や国語の時間に学習するでしょう。

ところでここには、その平家の一門が、とりわけ平清盛〈たいらのきよもり〉のように「平氏でないものは人に非〈あら〉ず。」とまで大言豪語〈だいげんごうご〉し、栄華〈えいが〉の頂上にあったものが、そのおごりと不遜〈ふそん〉の生活のゆえに、わずか二十年足らずのうちに、新興勢力〈しんこうせいりょく〉の源氏に改めたてられ、かなしくも一族朗党〈ろうとう〉が、壇〈だん〉の浦〈うら〉(瀬戸内海の周防灘〈すおうなだ〉の西端)の藻屑〈もくず〉と消え去ってからのちのことです。
平氏の残党は、源氏のつわもののため、追われに追われて逃げくる途中、この播磨〈はりま〉の地にも、かなりの人たちが逃げこみました。それらの多くは、敵の目をのがれて、草深い山奥の谷や森の中に住みつきましたが、その一部は、そうした山間の部落に落ちのび、先住の人たちとの親しい交わりをむすびました。
先祖がいかにおごりを極〈きわ〉めたとしても、子々孫々〈ししそんそん〉に罪〈つみ〉はありません。それに“弱きを救け、強きをくじく”ということは、日本の国の伝統的な義理人情です。住人たちは、この平氏の落人〈おちゅうど〉たちをかばってやりました。播磨も西の方、赤穂〈あこう〉の山奥の村に逃げこんだ平家の残党がありました。村人たちは、こっそりかくまっていましたのに、どうしたことか、その秘密〈ひみつ〉が漏〈も〉れて、源氏のつわものがかぎつけてまいりました。
そして、とうとうつかまってしまったのです。つかまったわけは、落人たちの持っていた刀に彫〈ほ〉り込んでいた鶏〈にわとり〉が、夜半にコケコッコーと鳴いたためだといわれています。
そのため、落人たちをかくまっていた村人たちは、それから長い間、にわとりを一羽も飼わなかったということです。

また、神崎郡大河内〈おおかわち〉町の谷あいの村に、壇〈だん〉の浦地蔵〈うらじぞう〉というのがあります。前にもかきましたように、安徳天皇のころ、源氏の一門に追われた平氏は、天皇を奉じて、だれも西国へ西国へとにげました。
そのうち、西国の勇士の中には一時、いきおいを取りもどして、ふたたび京都へ兵をすすめる計画をたてた者があります。
ちょどその時、源義経〈みなもとのよしつね〉の兄弟が木曽〈きそ〉の暴〈あば〉れん坊の義仲〈よしなか〉をほろぼしたいきおいにのって、せめてきて正面衝突〈しょうとつ〉となりました。
このいくさは、どちらの力も同じくらいで、どちらが勝つとも知れませんでしたが、義経は、ふいにぬけ道を考えて、平氏のうしろから追いうちをかけましたので、平氏はひとたまりもなく、散りじりになって、その一くみは大河内の谷あいの村へ逃げてきました。この土地に逃げてきた平氏の一族は、源氏に知れるのを恐れ、平民となって、しょっちゅう味方の様子をうかがっておりました。
しかし、寿永〈じゅえい〉四年三月二十四日、壇の浦の海戦で、平氏一門が海底ふかく消えていったことを人のうわさで知りました。
平民となっていたこの地の平氏たちは、このあわれさにそのめいふくを祈って、お地蔵さまをつくりました。
そして、これに名づけて壇の浦地蔵としました。
その地蔵尊は、現在も福田寺という寺の境内にあって、毎年八月二十三日に地蔵祭が行なわれています。

お問い合わせ

情報管理部広報係

電話番号:078-331-9962

ファクス番号:078-331-8022