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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > おみその長者〈ちょうじゃ〉(姫路市豊富町)

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更新日:2013年1月28日

おみその長者〈ちょうじゃ〉(姫路市豊富町)

むかし、むかしに、姫路の近くの横山〈よこやま〉(現在姫路市)というところに、ひどく貧乏なじじさまと、ばばさまがおりました。じじさまとばばさまの家は、ゆるやかな坂道の、中ごろのくぼ地にあり、熊笹〈くまざさ〉におおわれた、小さい草ぶきの家でした。
じじさまとばばさまは、そこでわらじをつくってくらしていました。年のくれの大みそかの日になっても、わらじをつくらねばたべていけません。
「でもな、ばばさまや、あしたは元日や、せめて米の一合(約〇・一八リットル)でも、神さまにそなえたいもんじゃのう。」
「それなら、上〈かみ〉の長者〈ちょうじゃ〉さまにいうて、じき返すでのう、米かしてくだされと、たのんでみたらばどうじゃ。」
「うん、そりゃ、ええことに気がついた。もしも、上の長者がかしてくれなんだら、下の長者にたのんでみようかのう。」
そういっといて、じじさまは、さっそくとでかけていきました。

坂をのぼると、石で土台をきずいた大きなかまえの、りっぱな家がありました。大そうな金持ちで、村のもんは、上の長者どんと呼んでいました。坂を下りると、広い田んぼの中に、道があって、少し行くと、石垣のりっぱな家がありました。上の長者どんに負けない金持ちで、村の人たちは、下の長者と呼んでいました。
じじさまは、まんず、上の長者どんのところへいきました。
「はあ、まことにすんませんが、わしたちは貧乏ぐらしで、あしたの正月というのに、神さまにお供えする一合の米もないこっちゃ。米を一合だけかしてけもうせや。」とたのみました。すると、
「それくらい神さまに供えたかったら、つねひごろ、心がけてしんぼうし、ためておくもんだ。アレあのうまやの前に馬のくそがあるから、あれでも持ってって上〈あ〉げろじゃ。」と上の長者はいいました。
じじさまは、しかたがないから、こんどは、下の長者どんのところへいって、前と同じようにいってたのみますと、
「一年一どの年とりに、米一合のくめんもできかねるなんて、何の役に立つや。俺家〈おらけ〉の牛小屋の前さ、行ってみろ、牛のくそでもあるべから、それでも持っていって神棚〈かみだな〉さ上げろや。」といいました。
じじさまは、仕方なく、スゴ、スゴと家にかえりました。
「じじさま、どうやった。」と、待っていたばばさまがききました。
「どこさ行っても分けてもらえなかった。仕方ねえから菜葉〈なっぱ〉づけでもあげて、神さまに供えようや、神さまごめんじゃが・・・。」
そこで、じじさまと、ばばさまは、二人で、つけものおけの氷を割り、菜葉〈なっぱ〉づけをほりおこし、神棚に供えました。
「ござい神さま、もし、ござい神さま、どうにも仕方がないから、この菜葉〈なっぱ〉づけでなんとか、がまんしてたもれや、うたてや、うたてや。」おおみそかの晩に、ふたりは、一心にござい神さまに手を合わせてたのみました。

ところが、その夜半〈よなか〉に、
“とんとん、とんとん”戸をたたく者がありました。
「はてさて、どなたでしょうか、こんな夜ふけに・・・。」と、ばばさまが、ねむげに目をこすりこすり出てきました。「旅の者です。やどがなくて困っています。こんばん一晩とめてくださいませんか。」
「はあ、こんなきたない家じゃけど、とまってくださるなら、おとめしましょう。けどな、ばばさんや、きっとお腹〈なか〉が空〈す〉いたるやろに、食べてもらうものがないじやのう。」
と、おくの間から、じじさまの声がしました。
「いいえ、いいえ、食べものなどいりません。ほんのとめてもらうだけでいいのです。」と旅の僧はいいました。「そんならどうぞ、はいってつかわせ・・・ほんに、あれでもよかったらのう。」といって、ばばさまは、じじさまと相談して、神棚に供えた菜葉づけを、旅の僧にたべさせました。
あくる朝、旅の僧は、あつく礼をいって、立ち去りました。が、別れのとき、じじさまたちの家の庭の隅〈すみ〉にあった古がめ・・・に、何か祈りごとをしていました。あとになって、その古がめをしらべると、何ともいえないおいしい味噌〈みそ〉が一ぱいつまっています。取っても取ってもなくなりません。じじさまたちは、この味噌を売って大長者になりました。上や下の長者よりもっと大きな長者になりました。

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