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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 柿〈かき〉の木と山伏〈やまぶし〉(姫路市柿山伏中ノ町)

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更新日:2013年1月7日

柿〈かき〉の木と山伏〈やまぶし〉(姫路市柿山伏中ノ町)

ひとりの山伏〈やまぶし〉が通りかかりました。
「修験道〈しゅげんどう〉」という、仏教の修行をして、いま山からおりてきたところでした。きびしい修行のあとですから、ひどくおなかを空〈す〉かせていました。その山伏の目に、つやつやと、赤くみのった柿〈かき〉の実〈み〉がこえずからほほえみかけました。山伏の目には、ほほえみかけたように見えたのです。みごとな柿の木でした。大きな柿の実が、夕日に照って、まったくおいしそうに見えました。
(ああ、うまそうだ)
山伏は、矢もたてもたまらなくなって、柿の木にのぼりはじめました。のぼりながら考えました。
(待てよ、おれは今しがた修行をおえたばかりの山伏だ、ひとの柿の木にだまってのぼって柿をくったりして、いいのだろうか)
けれど山伏はいつの間にか木にのぼっていました。そしてあたりを見まわしました。
(なあに、だれもいないじゃないか、今のうちなら大丈夫だ)
といいいい、柿の実をちぎって、ひといきにかじりつきました。柿の実はあかくうれていて、ほっぺたがおちそうでした。山伏はひげもじゃの顔をにこにこと笑いくずして、柿をたべていました。

木のしたを、この木のもちぬしが通りかかりました。土地の、ひゃくしょうです。ポタリと柿のたねが落ちてきました。また落ちてきました。おかしいなと思って、あおいでみると、なんと、山伏がにこにこと柿をぱくついているのでした。
もちぬしの男は、ひょうきんな男でした。
(よし、あの山伏をからかってやれ)
そして、わざと大声でさけびました。
「あれ、あれ、柿の木のこずえに、なにやら、とまっておるようだ。はて、カラスかな?カラスなら、カアカアとなくはずだ、なかねば、石をなげておっぱらうぞ。」
山伏はあわてました。
(しまった、こんなはずではなかったのに)
とにかく、石をなげられてはこまります。
「カア、カア、カア。」
と、いっしょうけんめい、カラスのなきまねをしました。
下では男がおかしくてなりません。大声で、
「うん、やっぱり、ありゃあ、カラスだな、たしかにいま、カアカアとないたわい。」
と、山伏にきこえるようにどなりました。
それから、またすこし考えて、山伏にきこえるようにさけびました。
「やあ、やあ、この木の上にとまっているのは、カラスかと思っていたが、どうも、トンビみたいじゃなあ、トンビなら、ピーヒョロヒョロとなくはずだ、なかねば、長い竹ざおをもってきて、たたきおとしてくれよう。」
山伏は、またまたあわてました。せいいっぱい、トンビに似〈に〉せて、
「ピーヒョロ・ピーヒョロ。」
となきました。
男は、ふきだしそうになるのを、うんとこらえて、どなりました。
「うん、うん、たしかにトンビじゃ、そのしょうこに、みごとにピーヒョロとないたわい。」
山伏は木の上で、ほっとしました。ところが、男はまたさけびました。
「しかし、トンビなら、あの大きなはねをひろげて、ばたばたと羽ばたいてピーヒョロとなくはずだ、おかしいぞ、ありゃ、にせトンビかな?」
さあ、たいへんです。山伏はあわてて木の上でばたばたと羽ばたくまねをして、ピーヒョロとさけびました。そのはずみに、枝がゆれ、足もとがくるいました。あっというまもなく、山伏は柿の木のこずえから、どさりと土の上におっこちてしまったのです。男は、わらいをこらえて、いいました。
「おや、おや、なんとこれは、山伏どのではなかったか、どうなされたのじゃ?」
「うん、いや、どうも、まっぴら、ごかんべんを・・・。」
山伏はことばもしどろもどろ、柿の実よりも、もっと赤いかおをしてどこかへにげていってしまいました。この話のあったところが、今の柿山伏のあたりだということです。

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