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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > どんがめっさん(家島町)

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更新日:2012年10月1日

どんがめっさん(家島町)

それはそれは遠い大昔のことでした。この家島にうつくしい白髪〈はくはつ〉をたばねた長いひげをもつ気品の高いえらい翁〈おきな〉が、釣〈つり〉をしながら毎日のくらしをたてていました。どこから来たというのか朝々、大きな亀〈かめ〉の背にのって沖に出て釣をしては、夕方に島へ帰ってくることにしていました。その日も、いつものように、亀の背にのって、沖で釣りをしていました。するとはるか吉備〈きび〉水道をぬけだしてくる大集団の船が、播磨灘〈はりまなだ〉に向って東進してくるのが見えました。小豆島〈しょうどしま〉をのり越えて、家島海域に迫って来ます。その姿を見つけた翁はただごとでないとおどろきながら、しばらくようすを見ておりました。やがて大船団が近づくと先導〈せんどう〉をゆく船から、チンカンドンドンとにぎやかな鳴りものではやしたてる船人たちの声がきこえます。そのさわぎにきき入っていますと船の中から、
「おい、おい、釣をしている翁よ、おまえはこの海の案内〈あんない〉を、事〈こと〉くわしく知っているか。」と、問い合わせの声がしました。
「ハイ、ハイ、この海のことなればどんなことでも心得〈こころえ〉ております。」と翁が答えました。
「そうか、そうか。それは嬉しいことだ。われわれは東国にまつろわぬ者たちを討つためにやって来た。ここから摂津までの水先案内〈みづさきあんない〉がほしいのだ。しばらくこの里で船を休め、部下の訓練〈くんれん〉や食料の補充〈ほじゅう〉をしたい。」と船の指揮者がたのみました。翁は、船団をその夜のうちに家島港へ案内し、それから数年が夢のようにたちました。きょうは、船団を、いよいよ摂津〈せっつ〉へ案内する日です。翁はいつものように亀に乗って船団の先導をとり、東へ東へと、船をすすめていき、着いたところが、難波〈なにわ〉が崎〈さき〉でした。翁はこれによって、大手柄を立てました。亀さんも大よろこびでした。でも翁の手柄のかげに亀さんの力のあったことは、だれ一人考えてくれません。
忙しい主人をあとに難波からひとまず一人ぽっちで引きあげてきた亀さんでした。主人の帰りを今か今かと毎日、沖をにらみながら待ちこがれ、いつまでもなぎさ・・・からはなれませんでした。
ながい間の年月をへて、そのうちに、こり固って、亀さんは、とうとう、その場で石になってしまいました。
いま家島の真浦〈まうら〉さん・・橋で、船からおりた目の前の丘に「水天宮」として、玉垣〈たまがき〉をめぐらせて祀〈まつ〉りこまれ、島の人びとから「どんがめっさん。」と親しみよばれています。

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