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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 翁塚〈おきなづか〉とチンカンドン(家島町)

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更新日:2012年11月26日

翁塚〈おきなづか〉とチンカンドン(家島町)

それは、それは、遠い遠い大昔のこと。どこからきたというのでしょうか。この家島に、読み、書き、そろばん、何んでもできる、えらいえらい翁〈おきな〉が住んでおりました。
翁はとても気だてのやさしい老人で、この島の人びとから父のように尊敬〈そんけい〉され、漁民〈ぎょみん〉たちの間にはなくてはならない人としてしたわれていました。この島に住んでいた人で翁を知らない者は一人もなく、毎日毎日、翁がたずねてくるのを心待ちに待ったということでした。翁は毎日毎日、島内を廻って家々をたずね、病人があればその養生法〈ようじょうほう〉を教えたり、薬をあたえたりしました。島の人びとの温たかい心からの布施〈ふせ〉によって、毎日を過していました。

翁はまったくの一人ポッチだったといわれ、そのためでしょうか、島の人びとの生活につよい関心をもっていました。水にこまっている人びとの苦しむすがたを見てかなしみ、島内をくまなく歩いて破風〈はぶ〉に適地を見つけ滑〈すべ〉り山のふもとを開いて井泉〈いずみ〉を作りました。
ところがあるとき、こんこんとわき出した清水〈しみず〉の霊夢〈れいむ〉にさそわれてひととき、居眠〈いねむ〉りからさめた翁が、人びとをおどろかすようなことをいいました。
「わしはさきほど尊い霊のおみちびきに会った、そして『翁よ、もうよい。それを島の人びとにあたえれば、幾百年たつともこの島の人びとの水には不自由はない。ここでこのまま姿を消し、けがれを知らぬさいはて・・・・の国へ引きこしてこい。それでよい。そのままでよい。』と尊いみ声の招きに会った。そこでわしは早速島をたち去りたい。」と、そしてまた翁は、
「自分はこれで島の人びとに大切なものを成しとげた。ここで、わしはこの島をたち出ることにしている。ねがわくば島の皆さんの手で、この井泉の見える所に“塚〈つか〉”を作ってほしい。その時わしは用意している鈴〈すず〉と鐘〈かね〉と太鼓〈たいこ〉を持って“塚”に身をしずめ、“塚”の中からチンカンドンと打ち鳴らそう、その音がきこえる間は、わしがこの世にあるしるしである。音が絶〈た〉えた時が、わしが天国に引きとられた時である、と思ってくれ。」といいました。

そして翁は島の漁師たちの手でつくってくれた“塚”の中の石棺〈せきかん〉に身をいれて埋〈うず〉もれていきました。
翁ののこした井泉は、汲〈く〉んでも汲んでも枯〈か〉れることなく、美くしい水をたたえています。
この井泉に水を汲む島の人びとの耳には、チン、カン、ドン。チン、カン、ドンと、翁の打ちならす音が、いつまでも、いつまでも鳴りひびいてくるそうです。そして、今もこの井泉は、こんこんと美しい水をたたえ、島の人たちのいのちの泉〈いずみ〉になっております。

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