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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 湯殿山の一本道(夢前町)

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更新日:2012年6月1日

湯殿山の一本道(夢前町)

江戸時代のことです。夢前町古知之庄〈こちのしょう〉に九兵衛〈くへえ〉という、よからぬ若者がおりました。いつでも悪い友だちを誘って、自分の家で悪い遊びをしていました。

きょうもまた、悪い友だち五人で、いつものように、悪い遊びに、ふけっていました。これを知った役人が手下をつれて、めしとりにきました。九兵衛らは驚いて、はだしのまま、湯殿山へ逃げこみました。役人も後を追って走りました。湯殿山は、高さ三百メートルほどの山で、この山をこすと、向こうは天領〈てんりょう〉といって、徳川幕府が直接治めている土地です。古知之庄は姫路藩の土地です。姫路藩の役人は、天領へはいっては、どんな悪い犯人でも、めしとることができないことになっていました。

五人は早く山をこして、天領へ逃げこみたいのです。役人は天領へはいるまでに、五人をめしとらねばなりません。逃げる五人が必死なら、追っかける役人もまたいのちがけです。岩につまづこうが、いばらがあろうが頓着〈とんじゃく〉なし、一生けんめいにかけ上りました。
山の尾根には一本の杣道〈そまみち〉があります。この道が姫路藩と天領坪〈てんりょうつぼ〉との境です。この杣道から、西を見ると、眼下の深い谷底に、細長い「坪の大地」が見えます。その南には、今、国の重要文化財になっている弥勒寺〈みろくじ〉の伽藍〈がらん〉が絵のように見えます。九兵衛ら五人はようやくこの道をまたいで、めしとりをまぬがれました。根が悪人どものことです。ここまでくると急に強がりだしました。
「お役人さんご苦労さん。ここまでおいで、甘酒進上〈あまざけしんじょう〉、くたびれもうけの骨折損〈ほねおりぞん〉てだれのことだい。ざまあ見ろい。」

さんざん悪口をいって、役人を恥かしめました。役人は残念でしようがありません。けれども道のむこうは天領です。幕府の許し〈ゆるし〉がなければ、どうすることもできません。じだんだふんでくやしがりましたが、どうにもなりません。
「きょうのところは見逃してやる。こんど古知之庄へかえって見ろ、その時こそひとり残らずめしとってやるからおぼえておけ。」
捨てせりふを残して、すごすごと帰りました。そののち九兵衛らは、ひそかに家へかえったところを五人とも、めしとられてしまったということです。

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