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更新日:2012年6月1日
何百年か前に、この地方にお殿さまが住んでいました。ある日、家来のひとりが顔色をかえてお殿さまのところへ駈けこんで〈かけこんで〉きました。
「お殿さま、一大事でございます。奥方〈おくがた〉と家来〈けらい〉がお殿さまを殺して、自分たちがお殿さまになってこの領地を治めようと相談しております。」お殿さまはこのことを聞いてすぐにその人たちを捕えて牢〈ろう〉に入れました。そして、死刑にしようとしましたがやめました。
お殿さまは村人をよんでこう伝えました。
「まむしをできるだけたくさん集めてまいれ。」
村人たちは野や山や川岸をあるきまわり、まむしをたくさんとってきました。何十匹何百匹のまむしが長持ちの中に入れられました。お殿さまはまた村人たちに命じて、谷間に大きな穴を掘らせました。
つぎの日、わるだくみをして牢に入れられていた人たちが牢から出され、前の日に掘らせた大きな穴の牢に入れられました。穴の中は水がたまり、虫けらがはいまわっています。お殿さまはまむしのはいった長持ちを持ってこさせ、この穴の中にほうりこみました。奥方や家来たちはたまったものではありません。体中をまむしにかまれ、苦しみながら死んでしまいました。その谷からは、いつまでもその人たちの涙が流れてぬれていたそうです。今でもその谷にはまむしがたくさんいます。村人たちは“まむし谷”といって夏になるとあまり近寄りません。
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