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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 家を焼いた古狐(夢前町)

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更新日:2012年6月1日

家を焼いた古狐(夢前町)

夢前町前之庄〈まえのしょう〉から莇野〈あぞの〉へいく所に、四辻峠〈よつつじとうげ〉・柿の木峠という、二つの峠があります。むかし、おすみさんというおばあさんが、孫〈まご〉の土産〈みやげ〉に大きな饅頭〈まんじゅう〉を持って、四辻峠を越して〈こして〉莇野〈あぞの〉へいきました。その途中で旅人に出会いました。

旅人「おばあさん、どこへいきよってん。」
すみ「わしはなー、莇野へ孫見に、いっきよんや。」
旅人「えーそれなら道が反対やがな、そんな方へいったら、前之庄へいてしまうで。」おすみばあさんはひよっと気がつきました。
すみ「ああほんまや、どないしょったんやろ。また家の方へ帰りよったがなー、けったいなことや、まるで狐〈きつね〉にだまされたんみたいや。」
旅人「そらきっと、狐にばやされたんやで(だまされた)おばあさん。その袋つつみな、何がはいってんのや。」
すみ「これかいな、これはな、孫への土産の饅頭〈まんじゅう〉や。」
旅人「それ饅頭かいな、それが悪い。悪い狐め、その饅頭に目をつけて、おばあさんをだましよったんやで、おしいけどその饅頭、山の中へ捨てときな、持っとったら、まただまされてやで。」おすみばあさんはこわくなりました。
すみ「そうやなー、おしいけどまた狐にだまされたら困る、饅頭はまた莇野〈あぞの〉で買うてもええし。」こんなことで、おすみばあさん、まんまと狐に饅頭をとられてしまいました。

それから後、一助爺さん〈いちすけじいさん〉が、四辻峠で大入道〈おおにゅうどう〉に追っかけられたとか、治之さん〈じのさん〉も大入道に追っかけられたとか、また柿の木峠では久吉どんが大入道に出会って腰を抜かし、ようやく歩けるようになったとたんに、山の奥で大きな笑い声を聞いたとか、つぎつぎと狐にだまされた人が出てきて、近所かいわいで大評判〈だいひょうばん〉になりました。

そのころ古知之庄〈こちのしょう〉に佐助〈さすけ〉という元気な若者がいました。「悪狐〈わるぎつね〉め、俺が生け取りにしてくれる」と、峠の山を、狐の穴をさがして歩きました。大きな森の中で狐の穴を見つけて、青松葉をくすべて、煙を穴の中へ、あおぎ入れました。驚いた狐、けむくてけむくてたまりません。穴から飛び出そうとしましたが、外には佐助がいて待ち受けています。鼻をくんくんいわせながら、穴のいちばん奥へ逃げこんで辛棒〈しんぼう〉しました。佐助は、いくらくすべても狐が出てこないので、「狐め、きょうはいないのかなー。」と思って夕方に家へ帰りました。お風呂や夕食をすませてゆっくりとねました。ふと、目をさますと、さあ大へん、家中もえあがる火につつまれています。「火事だー。」と、さけびながら、外へ飛び出しましたが、少しのまに、家がすっかり焼けてしまいました。

その後何日かたったある日、村で「稲荷下ろし〈いなりおろし〉」といって、神子さん〈みこさん〉に神霊〈しんれい〉が乗り移って、神さんがいろいろなことをいう神事〈しんじ〉がありました。そのとき神子さんに一匹の狐が乗り移って、いいました。「わしは、柿の木峠に住む古狐〈ふるぎつね〉じゃ。この間佐助め、わしの家をくすべおった。しっぺがえしに、あの晩佐助の家をくすべてやった。よく燃えたぞ。俺はあのとき、西の山で尻をめくって、尻あぶりをしていたわい。佐助め、思い知ったか。今からこの俺をお稲荷さん〈おいなりさん〉として社〈やしろ〉を建てて祭るようなら許してやる。さもなければ、また家を焼いてやる。」と、いって、狐の霊は山へ帰りました。
さすが元気な佐助も縮み〈ちぢみ〉上がりました。そこに居合わせた村人と相談して、お稲荷さんをお祭りしたということです。今でもこのお稲荷さんは、「火の用心」の神として信仰されています。

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