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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > 弁慶〈べんけい〉の鏡井戸〈かがみいど〉(姫路市書写)

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更新日:2012年12月17日

弁慶〈べんけい〉の鏡井戸〈かがみいど〉(姫路市書写)

むかし、書写〈しょしゃ〉の山に、源平の戦いで有名な源義経〈みなもとよしつね〉の家来であった武蔵坊弁慶〈むさしぼうべんけい〉が住んで修行にはげんでいたことがあります。
幼いころの名を鬼若丸〈おにわかまる〉といい、七才のとき、比叡山〈ひえいざん〉から移って書写の山で修行することになりましたが、父も母も身分の高い生まれであったことや、生まれつきの力もちであったために乱暴〈らんぼう〉な行ないがたびたびありました。

あるとき、食堂〈じきどう〉で昼ねをしている鬼若丸を見て、ひごろ彼の行ないを憎〈にく〉んでいる力じまんのひとりの僧〈そう〉が筆を取り出して、鬼若丸の顔にいたずら書きをしました。
その僧は身分の高いことを鼻にかけ、力じまんをする鬼若丸を憎く思って、何かあったら、みんなの前でこらしめ、はじをかかしてやろうと思っていました。
「みんな鬼若丸の顔を見てみよ。ねている間に鬼若が鬼になったぞ。鬼だ鬼だ。」といってさわぎました。
それを聞いた修行の僧たちが「なんだ、なんだ。」と集まってきました。
「おお!鬼だ。鬼若が鬼にかわった。」と、はやしたてました。みんなも乱暴者の鬼若丸をこらしめてやろうと思っていたので、いっそうおもしろそうにはやしたてました。
その声に目をさました鬼若丸は、あまりみんなが自分を見てさわぎたてているので、
「なんだ、どうしたんだ。」とたずねました。
「鬼若の顔が鬼にかわった、ほんとうの鬼にかわった。」と口々にいい、どっと笑いました。
やがて笑われているのが自分だと気づき、顔に手をやってみると、べっとりと手にすみがつきました。
「おや、だれかがいたずらしたな。」と思って顔を見ようとしましたが鏡〈かがみ〉がありません。うろうろしている鬼若丸を見てみんな大声で笑っています。
鬼若丸は、そのとき、ふと気がついて食堂〈じきどう〉のとなりにある井戸を思い出し、走っていきました。
井戸をのぞいて見て、あっとおどろきました。水に写った自分の顔がおそろしい鬼の顔にかわっているではありませんか。
すっかり腹を立てた鬼若丸は、そばにあったひとかかえもある棒〈ぼう〉を引きぬくと食堂にひきかえして
「だれだ!おれの顔にいたずらをしたものは。」とどなりました。
しかし、だれひとり返事するものもなく、あざけり笑うばかりです。
すっかり怒〈いか〉り狂〈くる〉った鬼若丸は、あたりかまわずうちかかりました。まっ赤になった顔に、べっとりぬられたすみのあとが、ほんとうの鬼のようです。あたりはたちまち、大乱闘〈らんとう〉となり、にげまどうもの、いろりから燃えさしの木をとって防ぐもの、大混乱〈こんらん〉におちいりました。そのうち、いろりの火が壁にもえ移り、みるみるうちに食堂〈じきどう〉は火につつまれ、手のほどこしようもなくなり、すっかり焼け落ちました。
このさわぎで鬼若丸はふたたび比叡山〈ひえいざん〉にかえされ、さわぎに加わった僧も刑〈けい〉を受けたり山をおろされたりしました。

書写の山には、今もそのあとをとどめる顔を写〈うつ〉した鏡井戸や、力石、弁慶の学問所、勉強机が残りその当時の面影〈おもかげ〉をしのぶことができます。

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