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更新日:2012年10月1日
むかしは漁船〈ぎょせん〉に時計をつんでおりませんので、漁師〈りょうし〉さんたちは時刻を知るのに、大へん苦労したと思います。昼であれば太陽を手がかりにして、太陽がま南まできたので十二時だな、夜であれば、オリオン座が西の山に入りかかったので、もう朝四時ごろになったなとか、いろいろとくふうをこらしました。
そのひとつに、金星があります。夜明けの東の空に金星が上ってくると、船ではかしき(調理する人)が起こされて朝食を作ります。しかし、まいにちのことですから、かしきがたおれて(つかれて)しまうというので、金星のことをかしきだおしの星と呼んでおります。
ある日のこと、東の空に明るい星が上ってきました。夜の運転当番の人は、
「あっ!かしきだおしの星が上ってきたぞ、夜明けもすぐだぞ。はようかしきを起こしてごはんを作らんと、朝ごはんがおくれるぞ。」
と、いってかしきをたたき起こしました。かしきは寝ていたところを急に起こされて、ねむけまなこをこすりながら甲板〈かんぱん〉に出てみますと、明かるい星が東の空に出ています。
「わあ、はよう朝のごはんを作らんと間にあわないぞ。」
と、あわてて朝食をつくりました。しかし、食事のよういができあがっても、少しも東の空は夜があけてきません。
「これはおかしいぞ。」
と、思って東の空をみますと、さきに上っていて金星と思った星の下から、ほんとうの金星が上ってきました。
「あっ、まちがって見ていたのか、それにしてもかしきだおしのほしとよくにているなあ、うまくだまされたぞ。」
それから後、この星(おおいぬ座のシリウス)のことを、漁師さんたちは、かしきだましのほしと呼んで、金星とまちがえないようにしたということです。
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