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更新日:2012年11月19日

鼓〈つつみ〉が滝〈だき〉の九頭龍〈くずりゅう〉―矢問村の由来―(川西市)

今から千年あまり前のことです。源氏〈げんじ〉の大将〈たいしょう〉に源満仲〈みなもとのみちなか〉という大へんえらい人がいました。満仲はかねてから、自分の居城〈きょじょう〉をもっとも自然に恵まれたよい土地につくりたいと、思っていました。
そしてある日、摂津〈せっつ〉の国、一〈いち〉の宮〈みや〉(大阪市)にある住吉〈すみよし〉神社に参拝〈さんぱい〉し、自分の住〈すま〉いについて、神のお告〈つ〉げを受けようと思いたちました。そして、神殿〈しんでん〉におこもりをしました。
ちょうど満願〈まんがん〉の日のことでした。満仲が、ついウトウトしていますと、
「満仲よ、満仲よ。」
との声が聞こえてきました。満仲は夢うつつで、それを聞いていました。
「満仲よ、よく聞けよ、汝〈なんじ〉の矢で北西の方を射〈い〉よ。その矢のとどまる所こそ汝の住いなるぞ。」
ハッと、われに返った満仲はあたりを見まわしましたが、何も見えませんし、何も聞こえません。
「おお、これぞ神のお告げなり。このお告げにそってわが居城〈きょじょう〉をきめようぞ。」
と喜び勇〈いさ〉んで神殿から出ました。そして満仲は、
「誰かある。わが弓を持て。」
家来〈けらい〉のひとりが満仲の弓を持って前に出ました。その弓と矢を手にした満仲は、
「みなの者、よく聞け。この満仲の放〈はな〉つ矢のとどまる所を、居城とさだめよとの神示〈しんじ〉あり。」
と、弓をキリキリッと引きしぼり、
「神よ。なにとぞご照覧〈しょうらん〉あれ。」
と、北西の空を目がけてヒョーッと矢を放〈はな〉ちました。
「みなの者、われにつづけ。」
と満仲は馬にまたがり、家来〈けらい〉を引き連〈つ〉れ矢を追いながら、北西を目指〈めざ〉して走りました。

満仲の一行〈いっこう〉は、途中〈とちゅう〉で道行く村人に、
「このあたりに、白い矢が飛んではこなかったか。」
と尋〈たず〉ねながら、今の川西市の荻原〈はぎわら〉の山の近くまできました。
ちょうどそこへ、ひとりの老人がとおりかかりました。満仲たちは馬を止めて、
「このあたりに、白い矢は飛んではこなかったか。」
と尋ねました。すると老人は、
「はい、飛んでまいりました。」
「おお、飛んできたか。してその方〈ほう〉、その矢の行方〈ゆくえ〉を知っているか。」
「はい、存〈ぞん〉じております。」
「うん、していずれに。」
「はい、この山の向うに滝〈たき〉がございます。その滝つぼのあたりへ飛んで行ったようでございます。」
その滝というのは、今は猪名川自然公園の中の渓流〈けいりゅう〉ですが、昔はここで水が堰〈せき〉とまっていて、上流は沼地のようになっていました。
満仲たちは、その老人のいった鼓〈つつみ〉が滝〈だき〉にきてみますと、大勢〈おおぜい〉の人が集まってワイワイとさわいでいます。みると、川の流れの中に一匹〈いっぴき〉の龍〈りゅう〉が、目に白い矢をうけて死んでいるではありませんか。満仲たちは目をみはりました。その龍は、頭が九つもあり、年功〈ねんこう〉を経〈へ〉たとても大きなものでした。

以前からこの滝には二匹の龍が住んでいて、一匹は下流へ逃げましたが一匹は満仲の矢にあたったのです。満仲は馬からおりて川の中へ入ろうとすると、家来のひとりが、
「殿〈との〉、貴〈とおと〉いお身〈み〉で、けもののそばに行かれることはなりません。私めが参〈まい〉ります。」
これを聞いた満仲は、
「神のお告げにしたがって放った矢である。この我〈わ〉れがたしかめずしてなんとするぞ。」
と、流れに身体〈からだ〉を乗〈の〉り入れて、龍に突〈つ〉きささっている矢を抜きとり、
「おお見よ。これぞまさしく、我れが射〈い〉たる矢なり。神のみ告げにより、この地を我が住〈すま〉いとするぞ。」
と、声高々と叫〈さけ〉びました。
こうして、満仲は、この近くの多田〈ただ〉という所に居城を築〈きず〉きました。これが多田源氏〈ただげんじ〉の発祥〈はっしょう〉となったのでした。また鼓が滝の附近の地を、矢を尋〈たず〉ね尋ねきた、ということから「矢問」と、よばれるようになりました。

さて、もう一匹の龍は、猪名川の下流へ逃〈のが〉れて、今の川西市の中央あたりまできて死んだとかいうことです。その附近に、この龍をまつってあるという、小戸〈おおべ〉神社があります。
満仲の矢に打たれて死んだ龍は、今の川西市、鼓〈つつみ〉が滝〈だき〉の少し下流に大きな岩があり、その岩の「祠〈ほこら〉」に、いまもまつってあるということです。

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