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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』阪神編 > 東大寺建立うらばなし(伊丹市寺本昆陽寺)

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更新日:2012年6月1日

東大寺建立うらばなし(伊丹市寺本昆陽寺)

行基〈ぎょうき〉さんは、聖武天皇〈しょうむてんのう〉の命〈めい〉をうけて奈良東大寺建立〈こんりゅう〉に活やくしましたが、その中で二月堂の建立に着手〈ちゃくしゅ〉したころのこと、行基さんは諸国をまわって、二月堂の工事現場に立ちよりました。

現場には、たくさんの材木が積み重ねてあって、頭梁〈とうりょう〉(大工さんのかしら)がそれにいちいち墨入れ〈すみいれ〉(番号などを書くこと)をしているところでした。
行基さんは、その頭梁にむかって「毎日ご苦労なことだな。なにか材料などで不自由しているようなれば私も寄進〈きしん〉したいから、えんりょなく申してみなさい。」と話しかけました。

頭梁が手をとめてみると、うすきたないなりをした坊さんが立っていて、えらそうな口〈くち〉をきいているから、なんだこの乞食坊主〈こじきぼうず〉めが、聞いたふうなことを、と、あたまからバカにしてかかり「いらないいらない。このお寺は、天皇さまのお声がかりで建てるのだから、不足なものなどあろうことかや。仕事のじゃまだから早くたちさらっしゃい。」と、まことにあいそがわるい。
行基さんは、にがわらいしながら「それでは頭梁さんたのみますよ。」といって、スタスタと東の方へ去っていきました。

ところが、そのあと、頭梁が行基さんがじゅずをもった手をのせていた木材を動かそうとしたところ、どうにも動かない。
「これはおかしい。」「どうしたのだろう。」
といっそう力をいれて動かそうとするが、まるで根をおろしたかのように少しも動かない。
それにゾッと寒くなって、みぶるいがしてきたのです。
そこで頭梁は、はじめて気がつき「さては、さきほどのお坊さんは生き仏さんで、私をためしにこられたのであったかも知れない。」
「これはえらいことをやった。すぐおわびを申し上げねば。」と、おどろきおそれて後をしたっておいつき「先ほどはまことに申しわけない失礼をいたしました。なにとぞおゆるしをいただきますよう。」
「つきましては堂の柱石〈はしらいし〉がすこし足りませんので、これをいただけますなれば、まことにありがたいことでございますが。」
「なんだ、そんなことか。」「それなら、わけはないことだ。」

行基さんが昆陽寺〈こやでら〉の方がくに向って、じゅずをサラサラともんでお経をとなえだすと、アーラふしぎや、天がにわかにかきくもって、風さえふきだし、大きな石がつぎからつぎと空からふってきて、みている間に五十個ほどもつみあげられました。
頭梁はびっくりして「お上人〈おしょうにん〉さま、お上人さま。もうたくさんでございます。もうどうぞおとめくださいますように。」と、とうとう腰をぬかしてしまいました。
行基さんが、うなづいてお経をやめますと、石のふるのはとまりましたが、とちゅうまでとんできていた石は急にお経がとまったので、そのまま、そこに落ちて二月堂へはとどかなかったのであります。

いまも、昆陽寺から二月堂の間にそんな石がたくさんあって、そまつにあつかうと罰があたるとか、たたるとかいわれ、柵〈さく〉などしてまつっているところもあります。

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