• お問い合わせ
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • サイトマップ
  • 携帯サイト

メニュー

ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』阪神編 > 怪岩甑岩〈かいがんこしきいわ〉(西宮市)

ここから本文です。

更新日:2012年10月22日

怪岩甑岩〈かいがんこしきいわ〉(西宮市)

西宮市の西よりを、北から南へ夙川〈しゅくがわ〉が流れています。その川にまたがるようにつくられている阪急夙川駅から、北へ約一・五キロメートルほどさかのぼると、越木岩〈こしきいわ〉のお社〈やしろ〉があります。夏でも木陰〈こかげ〉の涼しさを市民に与えてくれる社殿ですが、その裏に高さおよそ十二メートル、まわり四十五メートルもある巨大〈きょだい〉な岩があります。その形が「酒米をむす甑〈こしき〉に似ている。」ところから、「甑岩〈こしきいわ〉」とよばれています。また、いつの間にそうなったものかはわかりませんが、安産の神さまとしても親しまれ、あがめられています。
ところが、この巨岩には、地元の人たちからいまも怪岩として恐れられている物語りがあります。

はなしは、豊臣秀吉が大阪に城を築〈きず〉くというので、全国の大名に、石垣に使う石を集めるよう命令したころにさかのぼります。石をさがして、ある大名の家臣〈かしん〉が、越木岩の部落にやってきました。この巨岩に目をとめた家臣たちは、これこそ他の大名をうらやましがらせることのできる岩が見つかったとばかり大喜び、ただちに国もとから石工たちを呼びよせました。そして、村の長老たちにこう申しました。
「われらのご主君が、あの岩を大阪城の石がきとしてお使いなさることになった。お前たち村の衆〈しゅう〉にとって、いついつまでもの、ほまれと思え。」と、石工たちは、命じられるままに、ただちに適当な大きさに石を切りとるしごとにかかりました。それから一昼夜、しずかであった越木岩の部落に、時ならぬノミの音がひびきわたりはじめました。ところが、石切り作業が始まるか始まらないかのうちに、あたりの空がいつもの青空を失ない、ただならぬ光がさしはじめ、無気味になまぬるい風が断続的〈だんぞくてき〉に吹き出すという異常なようすになってきたのです。けれども、よそからつれてこられた石工たちには、それがなぜであるかわかりません。あいかわらずしごとをつづけています。まして、望〈のぞみ〉の岩が見つかったとばかり喜んで、少しでも早く大阪へ運ばねば、ということばかり考えている家臣たちに、気がつくはずがありません。たまりかねて部落一番の長老が、しごと場におそるおそる近づいて、「おそれながら村の衆がその岩のたたりがおそろしいとあのように申しております。お願いです、その岩を切るしごとを中止してください。」と申し出ましたが、「なんじゃっ。」と、ひとにらみされ相手にされませんでした。
部落の人たちは、甑岩にこもる白竜の神〈しん〉ばつをおそれていたのです。はたして神ばつはくだされました。とつぜんパッと五色の煙が岩から吹き出しました。そして、その煙に包まれて、石工たちは全部急に死んでしまいました。それも手足をふるわせ、目をむき出すといった非常な苦しみ方をして、息を引きとるというむごたらしいものだったのです。このようすを目の前に見た家臣たちは、さすがにおそろしくなったのか「これはこの岩のたたりにちがいない。」と青くなって、そうそうに立ち去ってしまいました。その時、石工たちがうちこんだクサビのあとが今も岩にのこっています。

しめなわをはった甑岩〈こしきいわ〉には、安産をいのる女の人が今もおまいりしています。そして、お宮さんから眺められる市内のようすや大阪湾のけしきを楽しんでいます。

お問い合わせ

情報管理部広報係

電話番号:078-331-9962

ファクス番号:078-331-8022