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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』阪神編 > 鯉石〈こひいし〉ものがたり(伊丹市大手町古城)

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更新日:2012年9月24日

鯉石〈こひいし〉ものがたり(伊丹市大手町古城)

ハー、エンヤラヤノ、エンヤラヤ、とたくましい男たちが十人あまり、汗〈あせ〉だくになって、いましもおおきな石を堀〈ほ〉りおこそうとしています。
それは、いまから百六十年も昔のことであります。
ところは、伊丹〈いたみ〉城内(伊丹市大手町)大和屋新兵衛〈やまとやしんべえ〉所有〈しょゆう〉の古城〈こじょう〉の畑地〈はたち〉
ときは、宝暦〈ほうれき〉年間(一七五一~一七六二)の春のひととき
この大石は、なかば土の中にうずまっていて、頭だけ地上に出したかたちになっていましたが、畑として麦や野菜〈やさい〉などをつくっており、いつもたがやすたびに、じゃまになるので、いつかは堀りおこそうと、かんがえられていたのでありました。
たまたま、ほかのしごとのついでに、ほりおこしてかたづけようということになったのです。
ヨイショ、ヨイショと、かわるがわる鍬〈くわ〉をいれて堀りましたが、なかなかの大石で
「これは、根〈ね〉が深〈ふか〉いぞ。」
「もう一息〈ひといき〉だ。」
「もううごくだろう。」
「やってみるか。」
と、みんなが鍬をすて棒〈ぼう〉などをもって、エンヤラヤ、エンヤラヤとうごかそうといっしょうけんめいでした。
ようやくのことで、大石はひっくりかえりました。
と、どうしたことでしょう。まことにふしぎなことに、その大石の下から、一尾〈いちび〉の大鯉〈おおごい〉がはねだしてきました。
ここは畑です。しかも、古城のかなり高いところです。水などあろうはずがありません。
人びとはアッとおどろいて、しばらくは、ものをいうこともできません。
サァー、それから、たいへんなさわぎになりました。
「これは、竜〈りゅう〉のへんげかも知れないぞ。」
「うっかりさわったら、たたりがあるかも知れないぞ。」
はやくお殿〈との〉さまのところへおとどけしなければ、ということになり、代表〈だいひょう〉がこの鯉〈こい〉をかごにいれて役所〈やくしょ〉へとどけ出ました。
ところが、ふしぎはそれだけではなく、その鯉のいた大石のところに、はっきりと鯉の形がほりこんだようにつけられていました。
そこで、役所でもすててはおけず、これを買いあげて、氏神さまのべんてん池にはなしてやり、大石には「鯉石」という名がつけられました。
文化〈ぶんか〉十一年(一八一四)になって、お役所に庭〈には〉がつくられることになったとき、この石を表書院〈おもてしょいん〉にすえ、「鯉石」と書いた高札がたてられました。
いま、この石は市立図書館〈としょかん〉の玄関〈げんかん〉のところにすえられて、昔をかたっています。

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