• お問い合わせ
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • サイトマップ
  • 携帯サイト

メニュー

ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』阪神編 > カラス塚〈づか〉の神事〈しんじ〉(芦屋市城山)

ここから本文です。

更新日:2012年9月24日

カラス塚〈づか〉の神事〈しんじ〉(芦屋市城山)

芦屋川の西にある山芦屋部落〈ぶらく〉では、歳末〈さいまつ〉がくると七才から十三才までの男の子が、その年の大将となった家にあつまり、夜中〈よなか〉の二時ごろがくると、まず梅干〈うめぼし〉をいれたお茶をごちそうになって元気をつけ、旗を先頭〈せんとう〉に押し立て大声で「トーカラトカラ・山の神のサイデンボウ。」と、叫〈さけ〉びながら家を出発します。水車谷には、数十軒の水車小屋が渓谷〈たに〉に散在しているのでありますが、これをつぎつぎとまわって、かねて用意してある粉米をもらい集め、子供たちはよろこんでこれをかついで帰ってくるのです。

正月四日がくると、早朝から部落の老人たちは、西山にお祀〈まつ〉りしてある山の神さまの境内を、きれいに掃除〈そうじ〉し、お堂にはしめなわを張り、大木には御幣〈ごへい〉(紙を切り細長い木にはさんでたらしたもの)をかけ、神酒をはじめ、いろいろのお供え物をして、子供たちが年末にあつめた粉米で、ダンゴをつくり、ミソでまぶして、山の神にお供えします。

やがて子供たちは、寒中にもかかわらず全員が、ハダカ、ハダシになって集合し、一列にならび、そしてダンゴを一個ずつもらって、これを口にくわえ、高座〈こうざ〉谷を横ぎり、東の城山のふもとにあるカラス塚まで走っていきます。カラス塚は、大きなまるい古墳〈こふん〉で石でかこい、樹〈じゅ〉木がその上に植えられています。
カラスさまは、部落の山の神のお使かい、いつもは、不吉な前兆〈ぜんちょう〉ときらわれていますが、この日に限って、神の化神〈けしん〉と考えられて神格化〈しんかくか〉されています。
カラス塚に集った子供たちは、ダンゴを口にくわえたままで「カアーカアー。」とカラスのなくまねをして、塚のまわりを三回とびまわって、ダンゴを塚にお供えするのであります。帰るときは、ここの老人たちから、またダンゴをもらって口にくわえて、もとの道を走り、もとの山の神にかえります。そして山の神のまわりをカラスのまねをして三回まわって、ダンゴを山の神にお供えし、最後に、たき火をしてあたたまり、この行事を終〈お〉わるのです。

このあとで、はじめて、着物をつけるのですが、不思議なことに、この行事をするあいだ、寒〈かん〉中でも少しも寒さを感じなく、風邪〈かぜ〉をひいた子供は、一人もないといわれています。雑煮〈ぞうに〉を腹一ぱいごちそうになって、めいめいの家にかえります。

この神事は、農家が一年の豊作〈ほうさく〉を祈る神事であるといわれます。山の神さまは、冬は山にはいって、山を守っているのですが、春になると里に下って、田の神となり、秋の収穫〈しゅうかく〉がすむと、また、山にかえるともいわれています。
カラス塚の石や樹木にふれると、たたりがあるとして、里人はおそれており、またここにお供えしたダンゴが早くなくなると、その年は豊作だと喜〈よろこ〉ばれ、カラスまつりの日は、一年の吉凶〈きっきょう〉をうらなう日でもあります。

この風習は、日露戦争までつづいていましたが、芦屋が住宅地となり、他所〈よそ〉の人たちがどんどん入りこんでくるにつれ廃止〈はいし〉されました。近年開こんして桐畑〈きりはた〉となったので、塚はけずりとられ、中心部だけが大正年間まで残っていました。しかし今は、個人の庭園となって、そのあとがのこっているだけであります。

お問い合わせ

情報管理部広報係

電話番号:078-331-9962

ファクス番号:078-331-8022